柿
本文約1,300字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
柿の木が立ち並ぶ村を舞台に、秋の収穫の様子を綴る。稲の取り入れが終わる頃、山浦から来る力強いお百姓が、馬を連れて柿を買いに現れる。子供の視点から、鮮やかな柿を軽々と収穫する大男の姿や、縁側での何気ない会話を叙情的に描く。かつての穏やかな農村の風景と、馬を連れて訪れる人が姿を消してしまったという、過ぎ去った時の流れを静かに伝えている。
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私の村は「柿の木の村」でした。家といふ家のまはりには、大きな小さな柿の木が、立ち並んでゐました。
夏は、村ぢゆうが深い青葉につゝまれ、秋はあざやかな紅葉に染りました。紅葉がちつてうつくしく色づいた実が、玉をつづつてゐるのを見るのは、どんなにたのしかつたでせう。
私の家の庭には、大きな柿の木が幾本もありましたので、家内だけで食べつくすわけにはいきません。山浦のお百姓さんが、稲のとりいれがすんだ時分に、馬をひいて、買ひにきました。
「こんちは、今年もきたぜ。」
山浦のお百姓さんは、ふとい声で、あいさつして、庭の柴戸口から入つてきました。
「どう/\。」
といひながら、馬を戸口につないでおいて、縁がはへきて腰をかけました。なた豆煙管でたばこをすぱ/\ふかしながら、おばあさんやお母さんと、一年ぶりのあいさつをするお百姓さんの姿を、私はわきの方から見てゐました。
同じお百姓さんでも、山浦といへば、大きな山の裾野の、本場のお百姓さんですから、私の村のお百姓さんたちにくらべると、姿かたちから、言葉つきまで、がつしりした力が感じられました。幼い私には、それが、何だかこはいやうな、親みにくいやうなものに、おもはれたものでした。
そんな大男が、腰にビクをゆはひつけて、する/\と身がるく、高い木のてつぺんまで一息に、登つてゆくのには、私はびつくりしました。山浦には、猿が住んでゐるといふから、それで木登りが上手なのだらう、などとおもひながら、見あげてゐますうちに、一枝々々と、赤い実を持つてたわんでゐたのが、ほつそりと尖つた枝ばかりになります。柿はみんなお百姓さんのビクの中へ入つて行きました。
お昼どきになりますと、お百姓さんは、木からおりてきて、縁がはへ腰かけました。おばあさんの入れてあげるお茶は、うまさうにして飲みましたが、御膳には箸をつけませんでした。
「いんえ、ここにあるだ。」
かう云つて、ふろしき包みをひろげたのを見ますと、お百姓さんの顔ほどもある、大きなおにぎりが出てきました。私はふしぎさうにして、お百姓さんがおにぎりを食べるのを、わきに立つて見てゐますと、
「こりや、お前さまの孫つこかえ。」