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TORENDIA

狐に化された話

本文約2,600字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

秋の夜、おばあさんは孫の太郎に、自身が若い頃に体験した不思議な出来事を語り始める。夜遅くに村の湯から帰る道中、一行は突如として聞こえ始めた激しい川の音や、雷鳴とともに降り出した雨に翻弄される。しかし、現れた村人から傘を受け取った際、おばあさんがとっさにとった行動を機に、周囲は月夜の静寂を取り戻す。かつての狐の仕業とされる不思議な体験と、時代の移り変わりによる村の変化を描く。

土田耕平

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🎧 狐に化された話 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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枕もとの障子に笹の葉のかげがうつりました。

「太郎や、お月さまが出ましたよ。」

とおばあさんが云ひました。太郎さんは顔をあげて、おもしろく模様形をした笹の葉のかげを、しばらく見てゐましたが、

「障子をあけて見ようかね、おばあさん。」

「いゝえ、外は寒いからこのまゝがいゝよ。」

秋の夜は早く更けてこほろぎの声がほそ/″\とひゞいてゐます。太郎さんとおばあさんは、一つ夜具の中に枕をならべて寝て居るのであります。障子にさす月あかりが、ほんのりと白く二人の顔を浮き出すやうに見せてゐます。やがて太郎さんは、

「おばあさん、何か話をして!」

「まあお待ち、今考へてゐるところだよ。」

とおばあさんは障子の方へ向けてゐた目を太郎さんの顔へ移し、

「今夜はちつと恐い話をして聞かせようぞ。」

「恐い話ならなほおもしろいや。」

「よし/\それでは狐に化された話をせう。」

「狐に? 誰が化されたの」

「おばあさんが。」

「おばあさんが化された? ほんたうなの?」

「ほんたうとも、まあお聞き。」

それからおばあさんは、つぎのやうな話をなさいました。

それは太郎さんが生れるずつと前、おばあさんがまだ若い頃のことであります。

「丁度今夜のやうにお月さまのあかるい晩、お湯のかへり道で化されたのだよ。」とおばあさんは云ひました。

お湯といふのは、太郎さんの村には田圃中から自然に湧き出る湯があつて、それに粗末な小屋掛けをして村の人たちは入りに行くのでありました。農家のことですから昼のうちは野良仕事がいそがしい。お夕飯をすましてからみな呼びかはして入りに行きます。おばあさん達女づれは、大てい夜おそく寝がけに行くことにしてゐました。

その晩は近所の誰彼さそひあはせて五六人づれで出かけました。夜ふけのことでお湯はもうすき/″\してゐました。おばあさん達はゆつくりと身体をのばして湯槽にひたりました。湧き出る湯の量が多いから、町の洗湯のやうに垢汚れのしてゐることはありません。こぼ/\と湯尻の落ちる音からして、いかにも新らしい匂やかなこゝろもちです。

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