幸坊の猫と鶏
本文約4,800字 ・ 読了時間 約10分
あらすじ(AIが作成しました)
百姓の幸坊は、飼っている鶏の「とうと」を可愛がっていた。ある日、とうとがいなくなり、幸坊は黒猫と共に探しに森へ入る。そこで幸坊は、窓の中にいるとうとを誘い出して捕まえようとする狐を目撃する。黒猫の助けを得て一度は難を逃れるものの、狐は再びとうとを狙い、最後には巣へ連れ去ってしまう。幸坊と黒猫は、捕らえられたとうとを取り戻すため、狐の巣へと向かう。不思議な出来事と狐との対決を描く物語。
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一
幸坊のうちは、ゐなかの百姓でしたから、鶏を飼つてゐました。そのうちに、をんどりはもう六年もゐるので、鶏としては、たいへんおぢいさんのはずですが、どういふものか、この鳥にかぎつて、わか/\しくしてゐました。まつ白な羽はいつも生えたてのやうに、つや/\して、とさかは赤いカンナの花のやうにまつ赤で、くちばしや足は、バタのやうに黄いろでした。
幸坊が餌をもつていくと、このをんどりがまつ先きにかけて来ます。幸坊がわざと、ぢらして餌をやらないと、をんどりは片足をあげながら、首をかしげて、ふしぎさうに餌箱を見上げますが、幸坊が笑ひながら、やつぱり餌をくれないでゐると、とう/\たまらなくなつてクウ/\と小さな声で鳴きます。
「幸ちやん、幸ちやん。ちやうだいな。そんな、いぢわるをしないで……」
さう言つてゐるやうに聞えます。
「やるよ、やるよ。さア/\。」
幸坊は、かはいさうになつて、餌をまいてやると、そこへ、いきなり、まつ黒な猫が一ぴきとび出してきます。ほかの鶏はびつくりして、クワツ/\と叫んでにげますけれど、をんどりだけはなか/\勇気があつて、ちよつと首をあげて、グウとのどをならして、猫をにらみます。猫は面白がつて、飛びつきさうにしますと、をんどりは頭を下げ、首の毛をさかだてゝ、猫がそばに来たら、目をつゝいてやらうと、まちかまへてゐます。
「黒や、もうおよしよ。とうとがきらふからね。」
幸坊はさう言つて、黒をだきあげて、そのつめたい鼻の先をじぶんの頬つぺたにぴつたりとつけ、ビロードのやうなその背をなでてやります。黒は甘えて、のどをゴロ/\音させながら、するどい爪で、しつかり幸坊の着物にすがりついてゐるのです。
二
或日、幸坊が学校の当番で、おそくうちへかへりました。すると、お母さんが、困つた顔をしてかう言ひました。
「幸や、あのね。をんどりが見えなくなつたよ。そこらの藪にでも入つてゐないか見ておいで。悪い狐が出るけれど、まさか昼だから、狐がとつたんでもあるまい。」