賢い秀雄さんの話
本文約2,700字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
七歳の秀雄は誰からも賢いと評判だが、屋根に登る悪癖があった。家族が梯子を隠しても、柿の木を伝って屋根に登る秀雄の知恵に親たちは手を焼く。ある日、屋根から降りた秀雄が突然泣き出した理由は、高い場所で泣くと足元が見えなくなり危険だと我慢していたためであった。この出来事を通じ、秀雄は屋根登りを卒業し、叔父の協力で本物の飛行機に触れる機会を得ることで、空への憧れをより健全な形で満たすようになる。
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日吉さんの秀雄さんは今年七つ。ほんとに賢い子供だ。毎日、ランドセルをせおつていきほひよく、
「いつてまゐります。」と、ごあいさつをして、家を出る。まつすぐに、道草なんかくはないで、さつさと学校へいつて、教室では先生のおつしやることを、よく聞いてゐて、よくそのとほりにするし、問はれたことには一番早く手をあげて、答をする。家へかへつては、よくおさらへをして、夜は早くねて、朝は早く起る。ほんとに好い子。賢い秀雄さんといふ名は、そこらでたれも知らぬものがないほどだ。
ところが、此の賢い秀雄さんが、どうしたものか、一つ悪いくせをおぼえた。といふのは、いつかしら、うらの軒に立てかけてある梯子をつたつて、屋根にのぼることであつた。
「あらまた、秀雄さん、屋根にのぼつてよ。あぶないから、いけません。早くお下りなさい。」
お姉さんがはら/\しておつしやるけれど、賢い秀雄さんが、どうしたわけか、これだけはどうしてもいふことをきかない。
「うゝん、大ぢやうぶだよ。ぼく、ちやんとつかまつてるから……あんまりこはがると、かへつて、おちるものだつて、大工の熊さんがをしへてくれたよ。」
「それぢや、あんたも大きくなつたら、大工さんになるのね。」
「うゝん、ちがふよ。僕は空の荒鷲になるんだ。だから今のうちから、高いところにのぼつて、なれるんだ。『僕は少年航空兵』ほら来た。あれは複葉の偵察機だよ。」
秀雄さんは、をりから飛んできた飛行機に両手をあげて、万歳をさけんでゐる。
そのうち、お母さんも出ていらして、しきりに下りていらつしやいといつても、なか/\下りようとはしない。やつと、お母さん、気がついて、
「あゝよろしい、下りなけりや、下りないで、いつまでも、そこへいらつしやい。梯子はとつてしまひますから……」
と、おつしやると、これには秀雄さんも閉口して、やつとおりてきた。
「もう上れないようにしませう。」と、お母さんは、お姉さんと二人して、重い梯子を横にたふして、お置きになつた。
ところが次の日曜日に、お姉さんが大きな声でさけんだ。
「あれ、秀雄さんが、また屋根に上ぼつてよ。どうして上ぼれたんでせう、梯子もかゝつてゐないのに……」