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TORENDIA

二重人格者

本文約4,300字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

河村八九郎は二十歳の二重人格者であり、大星由良之助と高師直の人格が交互に現れる状態にあった。人格の切り替わり時間が次第に短縮されることで、両者が同時に現れて自己を滅ぼす危機を感じた両親は、奇抜な治療法で知られる鬼頭博士を訪ねる。博士は、二つの人格が芝居の登場人物であることを指摘し、時間を引き延ばすための唯一の解決策として高速度映画撮影機を提示する。

小酒井不木

速度
🎧 二重人格者 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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一

河村八九郎は今年二十歳の二重人格者である。

第一の人格で彼は大星由良之助となり、第二の人格で高師直となった。

彼がどうしてこのような二重人格者となったかは、はっきりわかっていない。父が大酒家であるという外、父系にも母系にもこれという精神異常者はなかった。ただ父方の曾祖父が、お月様を猫に噛ませようと長い間努力して成功せず、疲労の結果、人面疽にかかって死んだということがいささか注目に値するだけである。

母が芝居好きで、よく彼を劇場へ連れて行ったことは、はじめて彼が大星由良之助となった間接の原因に数えてよいかも知れない。

「委細承知……はァはァ」

これが彼の、人によばれた時の返事であった。

「獅子身中の虫とはおのれが事……」

これは彼が弟を折檻する時の言葉であった。

ある時、八九郎は、原因不明の熱病にかかった。三日三晩眠りつづけて目がさめた時、彼は、

「鮒じゃ、鮒じゃ」

と叫んだ。母親はお腹がすいたためであろうと思い、早速鮒を煮て持って行くと、

「さなきだにおもきが上のさよ衣」

こういって、彼は蒲団をはねのけたので、母親は、熱病のために彼が、高師直になったことを知ったのである。

高師直の状態が一ヶ月ほど過ぎると彼は再び大星由良之助になった。そうして自分が高師直の時に行ったことを何一つ記憶していなかった。同様に、高師直の時には、大星由良之助の時に行ったことを少しも覚えておらなかった。

大星の状態が三週間ほど続くと、又もや、彼は高師直になった。そうして二週間の後、更に大星由良之助になった。

それから、十日の後、高師直

同じく八日の後、大星由良之助

同じく七日半の後、高師直

同じく七日の後、大星由良之助

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同じく三日の後、高師直

同じく二日二十時間の後、大星由良之助

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