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TORENDIA

三つの痣

本文約13,200字 ・ 読了時間 約27分

あらすじ(AIが作成しました)

法医学者である語り手は、自身のサディズムを満足させる目的でこの学問を志す。殺人犯の自白を促すため、死体解剖の過程で心理的な恐怖を与える「精神的拷問」という手法を考案する。ある事件の容疑者に対し、解剖する胎児に自身の頬と同じ痣を描き見せつけるという実験を試みる。その衝撃で男は錯乱し、語り手に暴力が振るわれる。この出来事により、語り手は自らの顔に消えない痣を刻み、独自の拷問法の運用を中断することを決める。

小酒井不木

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一

法医学者B氏は語る。

私のこの左の頬にある痣の由来を話せというのですか。御話し致しましょう。いかにもあなたの推定されたとおり、生れつきに出来た痣ではなくて、後天的に、いわば人工的に作られたものです。これはある男の暴力によって作られたものですが、皮下出血のために、この通り黒みがかったものとなりました。もう三年になりますけれど、少しも薄らいで行きません。なに蝙蝠の形に似て居ますって? 私の名は「安」ではありませんよ。玄冶店の妾宅に比べるとちとこの法医学教室は殺風景過ぎます。

余談はさて措き、この痣の由来を物語るには、どういう動機で私が法医学を専攻するようになったかということから御話ししなければなりません。然し、その動機を御話しするとなると、自然、私の弱点をも御話しせねばなりませんが、一旦御話しすると申しあげた以上、思い切って言うことにします。一口にいえば、私が法医学を選んだのは、私のサヂズム的な心を満足せしめる為だったのです。おや、そんなに眼をまるくしないでもよろしい。別にあなたを斬りも殴りも致しませんから御安心なさい。サヂズムは程度の差こそあれ誰にでもあるものです。自分で言うのは当にならぬかも知れませんが、私のは常人よりも少し強いくらいのものでした。而もこの痣を拵らえてからは、不思議にも私のサヂズムは薄らいで行きました。

それはとに角、私は、小さい時分から、他の子供と比較して幾分か残忍性が強かったように思います。他人が肉体的精神的に苦しむ姿を見て、気の毒に思うよりも寧ろ愉快に思ったことは確かです。然し、それかといって、自分で直接他人に苦痛を与えることはあまり好まなかったのです。

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