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TORENDIA

支那の狸汁

本文約2,300字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

晋の時代、燕の恵王の陵に棲む千年を経た古狸は、神通力を頼みに大学者・張華を論談でやり込めようと、美青年に化けて邸へ乗り込む。一方、使者を陵へ送り神木を伐り倒させた張華は、その火で青年を照らし出し、正体を暴く。本作は、古狸の傲慢さと張華の機転を軸に、人の身の程を知ることの重要性を描く。また、作者自身の境遇や時局への批評を織り交ぜつつ、狸の滑稽な顛末を綴る。

佐藤垢石

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🎧 支那の狸汁 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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晋の時代である。燕の恵王の陵の近所に千年をへた古狸が棲んでいた。千年も寿命を保ったのであるから、神通力の奥義に達し、変化の術はなんでも心得ている。

大入道や一つ目小僧などに化けて、村の百姓を脅かすのは、狸界における末輩の芸当だ。そんなのは、とうの昔に卒業している。つまり、自分は狸界の上層部にあって、指導者の最高峰であり、実力の保持者だ。

だから自分は、学者と経書詩文を論じ、その優劣を争って、人間に一泡吹かしてみなければ興味が薄い。

と途方もない野望を抱いたのである。そして、美青年に化けて、立派な馬に乗り、恵王の陵の門前から、あたりを払って出て行った。

これを、門前のご神木が見た。そこでご神木は、彼の姿を呼び止めて、

おい君、大分おめかしして、一体どこへ出かけて行くんだい。

と、声をかけた。

なんだ神木君か、ほかでもないがね、今日は、これから張華のところへ、論談の用件があって行くのだよ。馬上から狸は、反り身になって答えた。

おい貴公、それはほんとかい。止めろよ、うぬ惚れは――張華といえば、晋の国現代における大学者の最右翼であるのは、知らぬものはあるまい。と、ご神木がいうと、狸はご神木の言葉を抑えて、

張華が、なんだい。大家などといって、ひどく大面しているというから、これからわが輩が行って、一番へこましてやろうというんだよ。

それがいけないというのだ。一体、貴公は日ごろ、自分を買い被っている。

よせやい、乃公を甘くみるなよ、細工は流々仕上げをご覧だ。

困ったもんだね――おのれを知らんちうのは。

乃公は、貴公とは違うんだよ。貴公のように、地べたへ生えたなり、上へばかり伸び上がって、風を喰うのがしょうばいで、なにも知らない世間見ずと一緒にされてたまるかい。

おいおい、無理するなよ。無理をすると、貴公の生命が危ないばかりじゃない、そのあおりを食って、わが輩の命に影響するかも知れないからね。折角思い立ったのだろうが、まあ今日のところは思いとどまって、これから二人で一盃やろうじゃないか。どうだい、そのほうが賢明だぜ。

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