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TORENDIA

おせっかい夫人

本文約770字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

春の陽気な昼下がり、花子夫人は隣家の国枝家へ行くという男に出会う。留守だと知る夫人は男を親切心から国枝家へ入れようと奔走し、梯子を借りて男が湯殿の窓から侵入する手助けをする。やがて男は風呂敷包みを抱えて表玄関から現れ、挨拶もなしに去っていく。実はその男は周囲で暗躍していた空巣であり、夫人の善良なおせっかいによって空き巣の侵入が成功してしまう様子を描く物語。

岡本かの子

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🎧 おせっかい夫人 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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午前十一時半から十二時ちょっと過ぎまでの出来事です。うらうらと晴れた春の日の暖気に誘われて花子夫人は三時間も前に主人を送り出した門前へまたも出て見ました。糸目の艶をはっきりたてた手際の好い刺繍です。そこに隣家国枝さんとの境の垣に金紅色の蕾を寄り合わせ盛り合わせているぼけの枝は――だが、その蔭にうろうろしていたのは可愛ゆいカナリヤの雛ではありませんでした。黒っぽくぼやけた四十男でした。

「私、国枝の親類の者ですが、至急旅に立ちますのに必要なものをこの家に預けて置いたのですが留守で困っております」

若くて気の好い、そしてかなりおせっかいな花子夫人が、国枝さん一家が今朝から中野の知人へ出かけたことを知っていたのですからたまりません。国枝さんの嫁さんと姑さんが出かける時、厳重に鍵を利かせて置いた戸締りの何処かにすきがあるかと隣家の戸口という戸口を四十男とたたいて歩き廻りました。がだめでした。

「お気の毒ですわね、横浜の国枝さんのお姑さんのお家の方ででもおありでしょうにね」

「ええ私はその横浜の国枝さんの姑の家の者なのですが」

花子夫人の口まねを四十男がすればするほど、花子夫人は男を信用し気の毒がりました。

花子夫人は黄い声になり大げさに梯子の必要を前の家の左官のおかみさんに説き、中位なのを一つ借りて来て男に手伝わせ国枝さんの湯殿の上部の硝子窓に届かせ、少し腰弱そうな男のために梯子の下部まで押えてやり、硝子戸をうまくこじ開けさせて、男を家の中にいれてやりました。

三十分ばかり後、男は国枝さんの表玄関を内側からあけ、可成な重味の見える風呂敷包みを持って現われました。男はあれほど世話になった花子夫人の玄関へ御礼の言葉一ついい掛けるでもなく、それこそ不敵な面構えをして、さっさと歩き去りました。男は東京の山の手を荒していた空巣ねらいでした。

完

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