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TORENDIA

愚なる(?!)母の散文詩

本文約1,500字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

十四歳になった息子・太郎を想う母親が、自身の美貌を保つためのお化粧や、教養を深める学び、そして将来の息子の花嫁のために蓄財する姿を綴る。恋人のためではなく、すべては息子の幸福と誇りのために捧げられるべきだと信じ、母親は日々の研鑽と貯金に励む。息子を愛するあまり、やがて来る美しい嫁に意地悪をされる未来を想像してもなお、その喜びのために尽くそうとする一人の母の揺るぎない心情を描く。

岡本かの子

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🎧 愚なる(?!)母の散文詩 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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わたしは今、お化粧をせつせとして居ます。

けふは恋人のためにではありません。

あたしの息子太郎のためにです。

わたしの太郎は十四になりました。

そして、自分の女性に対する美の認識についてそろそろ云々するやうになりました。

太郎の為にも、わたしはお化粧をしなくてはなりません。太郎が、いまにいくら美しい恋人を持つとしても、マヽが汚なくては悲観するでせう。さういふ日の来ない先から、わたしはせつせとお化粧します。けふは恋人の為にではありません。太郎の為に未来のずつと未来までも、美くしいマヽであり度いお仕度の為にせつせとお化粧のお稽古です。

いまに美くしい恋人を持つても、つひ傍のマヽが汚なくては太郎も悲観せざるを得ないでせう。美しい恋人に美くしいマヽ、それでなければ、太郎の幸福は完全でないでせう。現在だとて、けふの今にも太郎は学校から帰ります。お菓子をもらふより先きに太郎はマヽを見ます。その時、太郎の眼にマヽが綺麗でなかつたら――わたしはお化粧をします。今日は恋人の為にではありません。

わたしは学びます。唐うたを、やまと言葉をフランス語を。そして知らうとします、哲学を宗教を。また絵を文学を、音楽を味ひます。けふのそれらは単にわたしの欲求や嗜好ではありません。太郎のマヽは優れた思想や感覚を持たねばなりません。わたしは学びます。唐うたを、やまと言葉をフランス語を。そして知らうとします哲学を宗教を。また絵を文学を音楽を味ひます。それゆゑ太郎の着物の綻びも縫うてやるひまがありません。太郎は、ぶつぶつ云つて居るやうです。しかし、いまに御らんなさい。太郎はやがて、唐うたを、やまと言葉をフランス語を学び、そして哲学を宗教を知ることによつてよき思想を持ち絵や文学や音楽を味つて充分官覚の洗練されたそのやうなマヽを持ち得るでせう。太郎は、綻びの着物の前をかき合せながら、そのやうなマヽを持ち得たプライドに満ちて幸福でせう。

今日からお金まうけを始め度いのです。わたしの下手な詩でも買つて下さい。

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