任侠二刀流
本文約221,300字 ・ 読了時間 約443分
あらすじ(AIが作成しました)
薩摩藩士伊集院五郎は、両国の蛇使い組紐のお仙に大金を渡し、ある男の旅を追うよう依頼する。一方、小石川の水戸屋敷から旅立った武士山影宗三郎は、福島宿で何者かの襲撃を受ける。物語は、宗三郎の活躍、地下室に幽囚された浜路の救出、そして将軍吉宗の病を癒やす薬草道人らの動きを交え、複雑な陰謀と大江戸を舞台にした人物たちの運命が交錯する中で展開する。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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茜茶屋での不思議な口説
ここは両国広小路、隅田川に向いた茜茶屋、一人の武士と一人の女、何かヒソヒソ話している。
「悪いことは云わぬ、諾と云いな」
「さあね、どうも気が進まないよ」
「馬鹿な女だ、こんないい話を」
「あんまり話がうますぎるからさ」
「気味でも悪いと云うのかい」
「そうだねえ、その辺だよ」
「案外弱気なお前だな」
「恋にかかっちゃあこんなものさ」
「ふん、馬鹿な、おノロケか」
「悪かったら止すがいいよ」
「いやいや一旦云い出したからには、俺はテコでも動かない」
「妾も理由を聞かなければ、やっぱりテコでも動かないよ」
「いやそいつは云われない」
「では妾も不承知さ」
「そう云わずと諾くがいい。無理の頼みではない筈だ。好きな男を取り持とう。いわばこういう話じゃあないか」
「しかも金までくれるってね」
「うん、旅費として五十両、成功すれば礼をやる」
「だからさ本当におかしいじゃあないか、真面目に聞いちゃあいられないよ」
「真面目に聞きな、嘘は云わぬ」
「そうさ嘘ではなさそうだね、だから一層気味が悪い。……ね、妾は思うのさ、これには底がありそうだね?」
「底もなけりゃあフタもないよ」
「馬鹿なことってありゃあしない」
「ではいよいよ厭なのだな」
「そうだねえ、まず止めよう」
「よし、それでは覚悟がある」
「ホ、ホ、ホ、ホ、どうしようってのさ」
「秘密の一端を明かせたからには、そのままには差し置けぬ!」
「おやおや今度は嚇すのかい」
「嚇しではない、本当に斬る」
「何を云うんだい、伊集院さん、そんな強面に乗るような、お仙だと思っているのかい」
「いや本当に叩っ斬る!」
「恐いわねえ、オオ恐い、ブルブルこんなに顫えているよ」
「ブッ、箆棒、笑っているくせに」
「それはそうと、ねえお前さん、ほんとにあの人木曽へ行くの?」
「うんそうだ、しかも明日」
「で、いつ頃帰るのさ?」
三人三様の旅の者
「で、いつ頃帰るのさ?」
こう訊いた女の声の中には、危惧と不安とがこもっていた。それを迂濶り見遁がすような、武士は不用意の人間ではない。
「さあいつ頃帰るかな」わざと焦すような口調をもって、
「ふふん、どうやら心配らしいな、教えてやろうか、え、お仙」