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TORENDIA

遠野の奇聞

本文約4,700字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

陸中国遠野郷の幽僻地で語り継がれる、山男、河童、雪女などの伝説や異聞怪談を綴る。本書は柳田国男が採録した百十九の話を題材に、山野に潜む妖異や怪奇な出来事を考察し、土地の風俗や空気感までを鮮やかに描き出す。物語の舞台となる奥深い山々の光景とともに、人界に触れる不思議な存在や、狼の経立ちといった凄まじい伝承を引用し、遠野という地が持つ独特の怪異の力と、日常と異界が交錯する不思議な世界を考察する随筆である。

泉鏡花

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🎧 遠野の奇聞 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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近ごろ近ごろ、おもしろき書を読みたり。柳田国男氏の著、遠野物語なり。再読三読、なお飽くことを知らず。この書は、陸中国上閉伊郡に遠野郷とて、山深き幽僻地の、伝説異聞怪談を、土地の人の談話したるを、氏が筆にて活かし描けるなり。あえて活かし描けるものと言う。しからざれば、妖怪変化豈得てかくのごとく活躍せんや。

この書、はじめをその地勢に起し、神の始、里の神、家の神等より、天狗、山男、山女、塚と森、魂の行方、まぼろし、雪女。河童、猿、狼、熊、狐の類より、昔々の歌謡に至るまで、話題すべて一百十九。附馬牛の山男、閉伊川の淵の河童、恐しき息を吐き、怪しき水掻の音を立てて、紙上を抜け出で、眼前に顕るる。近来の快心事、類少なき奇観なり。

昔より言い伝えて、随筆雑記に俤を留め、やがてこの昭代に形を消さんとしたる山男も、またために生命あるものとなりて、峰づたいに日光辺まで、のさのさと出で来らむとする概あり。

古来有名なる、岩代国会津の朱の盤、かの老媼茶話に、

奥州会津諏訪の宮に朱の盤という恐しき化物ありける。或暮年の頃廿五六なる若侍一人、諏訪の前を通りけるに常々化物あるよし聞及び、心すごく思いけるおり、又廿五六なる若侍来る。好き連と思い伴いて道すがら語りけるは、ここには朱の盤とて隠れなき化物あるよし、其方も聞及び給うかと尋ぬれば、後より来る若侍、その化物はかようの者かと、俄に面替り眼は皿のごとくにて額に角つき、顔は朱のごとく、頭の髪は針のごとく、口、耳の脇まで切れ歯たたきしける……

というもの、知己を当代に得たりと言うべし。

さて本文の九に記せる、

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