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TORENDIA

辻野久憲君

本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

辻野久憲の仕事と人柄を追想する。ヴァレリイやジィド、モオリアックらの翻訳に取り組み、特にリヴィエェルの熱い批評に共鳴した辻野の姿勢を記す。仕事の選択から滲む誠実な人柄や、カトリック文学へ傾倒し、最後には『イエス傳』を手がけた創作の変遷を描く。翻訳家として全身全霊で困難な仕事に挑み、旅先でも翻訳書を大切に持ち歩くような無邪気な一面を持っていた故人の思い出を、著者の視点から綴る。

堀辰雄

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🎧 辻野久憲君 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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辻野君のこと、大へん悲しい。仕事の上でも惜しいことをしたと思ひます。辻野君のした仕事の大半は、飜譯だつたけれど、所謂飜譯家にありがちのよそよそしいところがちつとも無くて、いつも熱をもつて、全身的に、普通の人ならてんで齒も立たないやうなものにぶつかつて行つてゐました。だからその選擇した作品を見てゆくと、辻野君といふ人がよく解るやうです。

ヴァレリイ、ジィド、モオリアック、リヴィエェルとその作者を擧げて見ても、――さう、このリヴィエェルといふ人など、辻野君には一番しつくりしてゐたのぢやないかな。この人の「ランボオ論」など辻野君の飜譯の中でも最も印象ぶかい。リヴィエェルの、佛蘭西などの批評家にはめづらしい位に熱つぽい書きかたが、辻野君自身にも本當にぴつたりしてゐたのだらうと思ひます。その後、リヴィエェルとクロオデルの往復書翰も是非譯したいといつて、それは既に手をつけてゐたやうですが、とうとう完成されずにしまつたのは、返す返すも惜しい。かういふ辻野君を措いては、他にさういふ特殊なものを手がける人もちよつと居ないでせうから。

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