TRENDIA CLASSIC

日付のない日記

堀辰雄

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今朝も七時ごろに目が覺める。

それから一時間ばかり、私は寢床の上で、新聞を讀みながら、日光浴をやる。この頃は、丁度おあつらへ向きに、その時分になるともう朝日が一ぱい寢床の上にあたりだす。

八時頃やつと起きる。自分でパンをあぶり、チイズを切り、紅茶をいれる。無精な私なのだが、これだけは自分でしないと氣にいらない。

郵便物がくる。その中に雜誌が二三册と、江川書房からの小包がひとつある。眞先きにその小包を開けて見ると、小林の今度譯した「テスト氏」。――何だか、かう、すらりと脊の高い人を見たやうな感じの、美しい小册子である。

私はそれをそのまま、飮みさしの紅茶と一しよに、自分の部屋へ持つて行つて、早速ペーヂを切りながら、ところどころを拾ひ讀みする。――ヴァレリイの筆の難解なせゐもあらうが、もう頭がすこしぼんやりしだす。へんに眠い。これがこの頃の私の病氣なんだ。一種の神經衰弱ださうだけれど。……私は氣分を一變させようと、今度は、この頃日課のやうに讀んでゐるプルウストの本を取りあげる。小さな側机の上に、プルウストの本ばかり十册以上もうづ高く積んである。私はいつもその中から手あたり次第に一册を引つこ拔いて、それをまたどこといふことなしに開けて見て、そこをあきるまで讀むことにしてゐる。かうでもしなければ、私には到底この大部の小説を讀む氣になんかなれぬ。――そして私は今日はこんな一節にぶつかる。

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