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TORENDIA

ランプの下で

本文約2,000字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

山に籠もり執筆から遠ざかっていた著者が、春の訪れとともに自身の近況や出版予定の書物について綴る。随筆や小品を収めた『狐の手套』、アポリネールやコクトーらの訳詩を収める『一二三』の刊行計画、さらに仲間と計画する叢書の構想を語る。最後に、冬の静寂の中で思索しつつ、リルケの即興詩を引用して自身の日常と創作への心境を映し出す。

堀辰雄

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🎧 ランプの下で / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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山にやつて來てから、もう隨分長いこと書かない。去年はほんたうに何も書きたくなかつたので、あつさりと何も書かなかつたが、今年はそんな氣持はかなぐり棄てて、ひとつうんと書いて見るつもりだ。

しかしまだ、何が書けるのやら、自分にも見當がつかない始末だ。が、今年は――秋にでもなつたら、ひよつとしたら詩が書けさうな氣がしてゐる。もし書けたら、一ぺんにどつさり發表する。それまでは、相變らず、隨筆を書いたり、飜譯などをやつてゐるより仕樣があるまいと思つてゐる。まあ、ひとつ本當の仕事は秋まで待つてゐて貰はう。

この春には、その代り、本を二三册出す。ついでだから本の廣告をしてしまへ。

「狐の手套」――これは僕のこれまで書いた隨筆と小品とを何もかもごつちやに集めたもの。「狐の手套」といふのは、ヂギタリスの異名ださうだが、或るとき何でもない隨筆を書いて氣まぐれにそんな題をくつつけたのだが、ちよつとファンタスチックな味があつて、僕の隨筆集などの題には惡くなからうと思つて、それをそのまま採つて表題とした。さういつた風のファンテジイをはじめ、いくぶん骨を折つて書いたエッセイから、二三枚ぐらゐの何でもないものも、わざと棄てずに、殆んど全部採録した。それらの中から僕の日常生活の詩みたいなものが感ぜられれば、それでいいのである。ポケットにちよつと入れるやうな、小さな本にして貰ふつもりだ。

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