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TORENDIA

棉の花

本文約380字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

十歳の夏、小母と風呂に通った棉の花咲く畑の記憶をたどりながら、千葉の借家の庭に蒔こうとした棉の種の行方を、妻にそれとなく尋ねる原民喜の掌編。

原民喜

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🎧 棉の花 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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十歳の時の夏、構造は川端の小母の家で暮した。小母は夕方、構造を連れて畑のなかを通って、或る家の風呂へ入らして貰ひに行くのだった。湯気で上気した小母の顔が湯気の中の電燈と一緒に彼の瞳に映ったりした。帰りは月が出てゐて、畑には棉の花が咲いてゐた。

或る日、母が来て、久し振りで見た母の顔は懐しかったが、もういい加減で家へ帰らないかと誘ひ出すと、構造は顔を顰めて駄々を捏ねた。それを二人の女は面白いことのやうに笑った。

今度東京を離れて千葉海岸の借家へ移ると四坪の庭と風呂桶が附いてゐた。それで風呂桶を買って据ゑ、庭には何か蒔かうかと思った。何時か妻が棉売りから棉を買った時、一つまみの棉の種を貰ったのを想ひ出した。彼はそれを尋ねてみた。しかし、妻は割烹着のポケットのなかに、いろんな書きつけなどと一緒に入れてゐたのだが、何処へやったのかもう憶ひ出せなかった。

完

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