TRENDIA CLASSIC
東北の家
片山廣子
1 / 16
東北に子の住む家を見にくれば白き仔猫が鈴振りゐたり
東京に生れて東京にそだち東京で縁づいたFが、はじめて仙台に住むことになつたのは昭和十六年の夏であつた。Fの夫が商工省から仙台の鉱山局に転じて行つたのである。そとに出ることをひどく面倒がる私も、私としては気がるによばれて仙台の家にいく度か泊りに行つた。十六年と十七年の二度の秋、それから十八年の春と、そのたびに十日位づつは泊つてゐたから、つまり三十日間なじみの仙台である。わかい時からまるで旅行の味を知らずに、鎌倉と軽井沢に子供たちの夏休みの七月八月を過すだけで、ある時何かの拍子に東海道は興津ぐらゐまで行つたといふ珍らしい引込み思案の私がはるばる仙台まで出かけて行つたのは、先きが自分の娘の家であるだけでなく、若い時分から歌の方で万葉でも古今でもむやみと読みなれた「みちのく」といふ名にあこがれてゐたからであらう。まことに、「みちの奥」であつた。「冬はさむいのよ」とFが言つたけれど、私はその寒い冬を知らない、ただ好い季節だけの旅びとであつたから。
片山廣子の他の作品
TRENDIA CLASSIC
赤とピンクの世
界
片山廣子
赤とピンクの世界
片山廣子
TRENDIA CLASSIC
あけび
片山廣子
あけび
片山廣子
TRENDIA CLASSIC
或る国のこよみ
片山廣子
或る国のこよみ
片山廣子
TRENDIA CLASSIC
アラン島
片山廣子
アラン島
片山廣子
TRENDIA CLASSIC
イエスとペテロ
片山廣子
イエスとペテロ
片山廣子
TRENDIA CLASSIC
池を掘る
片山廣子
池を掘る
片山廣子
TRENDIA CLASSIC
L氏殺人事件
片山廣子
L氏殺人事件
片山廣子
TRENDIA CLASSIC
「王の玄関」イ
エーツ戯曲
片山廣子
「王の玄関」イエーツ戯曲
片山廣子
TRENDIA CLASSIC
大へび小へび
片山廣子
大へび小へび
片山廣子
TRENDIA CLASSIC
お嬢さん
片山廣子
お嬢さん
片山廣子
TRENDIA CLASSIC
買食ひ
片山廣子
買食ひ
片山廣子
TRENDIA CLASSIC
過去となつたア
イルランド文学
片山廣子
過去となつたアイルランド文学
片山廣子