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TORENDIA

池を掘る

本文約3,100字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

戦時下、防空体制の強化に伴い防火貯水池の設置が求められる中、新井宿三丁目で空地のない筆者の自宅庭に池を掘る計画が持ち上がる。愛国心に駆られる町会からの懇願と、将来的な自宅への強制収容を避ける意図から、筆者は庭への池建設を受け入れる。地域の主婦たちが奉仕する中、植木屋の工夫で「山水」の形に掘り進められ、池は完成する。しかし、池が実際に使われることはなく、やがて筆者は土地を離れ、家も取り壊される運命をたどる。

片山廣子

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🎧 池を掘る / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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その頃、防空壕は各戸に一つか二つ位づつ掘られてゐたが、防火貯水池もだんだん必要となつて来たので、至急に用意をするやうその筋の命令が出た。山王一丁目二丁目新井宿一丁目から七丁目まで一町ごとに一つの貯水池はぜひ必要で、神社の境内か町内の空地にそれぞれ掘る支度をしたのだが、さて新井宿三丁目は郵便局や銀行もあり一ばん賑やかな通りで空地は一つもなかつた。神社は熊野神社を祭つてあるが、これは高い石段をのぼつて松や杉の茂つた上の方まで行くのだから、むろん貯水池なんぞ掘れない。町会の人たちは大いに考へて、一ばん住む人のすくない一ばん庭のひろい一軒の住宅に目ぼしをつけたのが、不幸なことにそこは私の家であつた。

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