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TORENDIA

麦の芽

本文約4,500字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

リウマチで寝たきりの老農夫善ニョムは、病を抱えながらも麦畑の世話に生きがいを感じていた。ある日、畑に侵入し麦を荒らす犬と地主の娘を許せず、憤りのあまり天秤棒で娘を打ちすえてしまう。この騒動により地主は激怒し、小作の取り上げをちらつかせて圧力をかける。善ニョムは榛の木畑を差し出すよう強要されるが、必死に育ててきた麦を守ろうと頑なに拒み、激しい悔しさと怒りの中で葛藤し続ける。

徳永直

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🎧 麦の芽 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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一

善ニョムさんは、息子達夫婦が、肥料を馬の背につけて野良へ出ていってしまう間、尻骨の痛い寝床の中で、眼を瞑って我慢していた。

「じゃとっさん、夕方になったら馬ハミ(糧)だけこさいといてくんなさろ、無理しておきたらいかんけんが」

出がけに嫁が、上り框のところから、駄目をおして出ていった。

「ああよし、よし……」

善ニョムさんは、そう寝床のなかで返事しながらうれしかった。いい嫁だ。孝行な倅にうってつけの気だてのよい嫁だ。老人の俺に仕事をさせまいとする心掛がよくわかる――。

しかし、善ニョムさんは寝床の中で、もう三日くらした。年のせいか左脚のリュウマチが、この二月の寒気で痛んでしようがなかった。

「温泉にやりちゃあけんと、そりゃ出来ねえで、ウンと寝て癒してくんなさろ……」

息子は金がないのを詫びて、夫婦して、大事に善ニョムさんを寝かしたのだった……が、まだ六十七の善ニョムさんの身体は、寝ていることは起きて働いていることよりも、よけい苦痛だった。

寝ていると、眼は益々冴えてくるし、手や足の関節が、ボキボキと音がして、日向におっぽり放しの肥料桶みたいに、ガタガタにゆるんで、タガがはずれてしまうように感じられた。――起きて縄でもないてぇ、草履でもつくりてぇ、――そう思っても、孝行な息子達夫婦は無理矢理に、善ニョムさんを寝床に追い込み、自分達の蒲団までもってきて、着かせて、子供でもあやすように云った。

「ナアとっさん、麦がとれたら山の湯につれてってやるけん、おとなしゅう我慢していてくんなさろ……」

しかし、善ニョムさんは、リュウマチの痛みが少し薄らいだそれよりもよっぽど尻骨の痛みがつよくなると、我慢にも寝ていられなくなった。善ニョムさんは今朝まだ息子達が寝ているうちから思案していた。――明日息子達が川端田圃の方へ出かけるから、俺ァひとつ榛の木畑の方へ、こっそり行ってやろう――。

二

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