TORENDIA
能因法師
岡本綺堂
TORENDIA
能因法師
本文約16,900字 ・ 読了時間 約34分
あらすじ(AIが作成しました)
洛外の北嵯峨にある庵で、能因法師は弟子と共に日差しに顔を晒し、旅から戻ったかのように装っている。そこへ藤原節信が訪れ、能因の不可解な行動に疑念を抱く。さらに伏柴の加賀が加わり、自身の名声を高めるために恋に破れたふりをする計画を語る。能因と加賀は互いの企みを共有し、秘密裏に歌を世に出そうと画策する。節信が持ち込んだ骨董の蛙の干物を巡って議論が交わされる中、物語は歌と見栄が渦巻く風流で滑稽な人間模様を描き出す。
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登場人物
能因法師
藤原節信
能因の弟子良因
花園少將
少將の奧園生
伏柴の加賀
陰陽師阿部正親
[#改ページ]
藤原時代。秋のなかば。
洛外の北嵯峨。能因法師の庵。
藁葺の二重家體にて、正面の上のかたに佛壇あり、その前に經卷をのせたる經机を置く。
佛壇につゞきて棚のやうなものを調へ、これに歌集または料紙箱、硯など色々あり、下のかたは壁にてその前に爐を設く。下のかた折曲りて竹の肱掛窓あり。家體の上のかたは奧の間のこゝろにて出入の襖あり。庭に面せる方は簾をたれたる半窓にて、窓の外には糸瓜のぶら下りし棚あり。庭の下のかたに低き垣の枝折戸、垣のほとりには秋草咲けり。垣の外には榎の大樹あり。うしろには森、丘、田畑など遠く見ゆ。
(主人の能因法師、四十餘歳、上のかたの窓より首を出してゐる。その顏は日に燬けて眞黒になつてゐる。弟子の良因は庭に降りて落葉をかいてゐる。鳥の聲きこゆ。)