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TORENDIA

オシラ神に関する二三の臆説

本文約11,400字 ・ 読了時間 約23分

あらすじ(AIが作成しました)

東北地方で信仰される「オシラ神」について、その由来や性格を複数の視点から論じる。山形県庄内地方の「オクナイ様」の事例を中心に、男女二体で構成される像の形態や祭礼の様相を詳述する。また、アイヌの家神であるチセイコロカムイとの類似性や、平安時代の記録に見られる流行神の偶像が雛人形へと転じた可能性を考察し、今後の資料収集を通じてその根源を解明すべきことを提唱する。

喜田貞吉

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一 はしがき

東北文化の研究については、土俗上、信仰上、見のがすことのできないものの一つにオシラ神がある。オシラ神の事については、ことにこの方面の研究にはなはだ多くの薀蓄を有せられる佐々木喜善君の報告を、本誌創刊号上において紹介するを得たことを光栄とする。たまたまこれと時を同じゅうして、わが郷土研究界の権威なる柳田國男君が、「オシラ神の話」と題する興味深い一文を文藝春秋の九月号に発表せられた。けだしこの神に関する研究が、ますます盛んになろうという機運の到来したものといわねばならぬ。もしこれをこの神の威霊を信ずる人たちに言わせたなら、或いはオシラ神の思召だと言うかもしれぬ。これがまことに偶然の事であるとしても、我々はこれを機会として、ますますこの方面の資料の蒐集に努力し、各方面からこれが研究を進めてみたい。かくの如くにして、わが東北文化の一面は漸次明らかにせらるべきである。

オシラ神のことについては、これまでにもすでに柳田、佐々木の両君をはじめとして、少からずその説が学界に紹介せられている。しかしながらそれは主として現代における奥州方面のことであって、過去の事、また他の地方のことは、あまり多く紹介せられておらぬかに見受けられる。所変れば品変る、難波の芦は伊勢の浜荻だなどと、いまさら事新しゅう言うまでもないが、もとは同一根原のものであっても、地方により、時代によって、名称も違えばこれに関する伝説も変ってくる。余輩はそれらの違った材料をなるべく多く集めて、また変った立場からの見解をも広く尋ねて、これを綜合した上にはじめてこの神の由来沿革を明らかにすることを期待する。前記佐々木喜善君も引き続きその薀蓄を発表せられるべく予約せられた。東大史料編纂官たる鷲尾順敬博士も、博士の仏教的見地から採訪せられたる資料について、不日高見を寄せらるべく承諾せられた。願わくば各地の同好者諸君、この機会をもって続々見聞せられたところを御報告くだされたい。これが説明のために写真またはスケッチを添えられることはもっとも歓迎するところである。

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