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TORENDIA

大岡政談

本文約640,500字 ・ 読了時間 約1281分

あらすじ(AIが作成しました)

徳川時代中期の江戸を舞台に、理想的な町奉行・大岡越前守が難解な疑獄事件を解決していく様を描く。証拠があっても白状しない被告人をいかにして自白させるかに重きを置く裁判趣味の物語群を収める。十六件の事件を収録するが、一つ一つの物語は無名の民衆によって作り上げられ精練されてきた。超人的な洞察力を持つ奉行が、真実を明らかにし罪を裁くことで、権力や理不尽な状況に不満を抱く当時の人々の共感と喝采を得た大衆文芸の代表的な作品である。

作者不詳

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解題

法學博士 尾佐竹 猛

古來名判官といへば大岡越前守にとゞめをさすが、その事蹟といへば講談物や芝居で喧傳せられて居るのに過ぎないので、眞の事蹟としては反つて傳はつて居るものは少いのである。

所謂大岡裁判なるものは、徳川時代中期の無名の大衆作家の手に成り、民衆に依つて漸次精練大成せられて、動かすべからざる根據を植付けられたのであるから、その生命は最も永いのである。我國に於ける大衆文藝として最も優れたるものゝ一つである。

その何が故にかゝる聲譽を得たかといへば、これは我國の文藝に乏しき探偵趣味のあるのが、その主たる原因である。

古い處では青砥藤綱はあるが、これはあまりに古く、また事柄も少いから、一般人士の耳には入りがたい、さりとて本朝櫻陰比事の類はあるが、これは支那種でもあり、少し堅過ぎる。大岡物はこの間にありて異彩を放つて民衆向である。中には支那種の飜案物もあるが巧みに其種を知らしめざる程日本化して居る。それに當時の民衆の最も敵としまた最も非難多き奉行の處置振りに慊らざるものは理想的の大岡物を讀んで、密に溜飮を下げたといふのも、大岡物を謳歌する一理由ともなつたであらう。

しかし嚴格にいふときは大岡裁判は探偵趣味といふよりは、寧ろ裁判趣味といつた方が適當である。巧妙なる探偵術に依つて犯人を搜査するといふよりも、法廷に曳かれて白状せざる奸兇の徒を如何にして白状させたかといふことに、興味がかゝつて居るのである。勿論その白状さす爲めには種々の探偵術を用ひて居るが、物語の骨子は證據はあつても白状せぬ被告人を白状させる處に、大岡越前守の手腕を見るのである。

これは徳川中期の産物であるから、かゝる作品が出來たのである。犯罪の搜査も裁判も町奉行の職權であるから、與力同心さては目明し岡ツ引輩の探偵の巧妙だけでは町奉行は光らない。否その巧妙な探偵もこれは奉行の指※[#「圖」の「回」に代えて「面から一、二画目をとったもの」、2-5]から出るのが原則であるから、町奉行の手柄としては白状させることに重きを置かなくてはならぬ。

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