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TORENDIA

えぞおばけ列伝

本文約31,700字 ・ 読了時間 約64分

あらすじ(AIが作成しました)

樺太アイヌの伝承に伝わる多彩なおばけたちの生態や説話を収める。放屁で舟を裂く屁っぴりおばけや、食べ物をねだる腹ぺこおばけ、地中に潜む地下のおばけなど、邪気のないものから恐ろしいものまでを描く。また、幼児の魂を奪うばけもの婆をヤイレスポが取り戻す物語や、踊り狂う魔の集団パウチの怪異、アイヌ民族特有の風習や土俗的な世界観を織り交ぜながら、異界の存在と人間との関わりを綴る記録集である。

作者不詳

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えぞおばけ列伝 [#改ページ]

1.へっぴりおばけ

屋内に独りいると突然炉の中でポアと音を発する.するとあちらでもポア,こちらでもポアとさいげんがない.臭くてかなわない.そういう際には,こっちでも負けずにポアと放してやれば,恐れ入って退散する.あいにくと臭いのが間に合わぬときは,ポアと口真似するだけでも退散するというから,このおばけ案外に気はやさしいのかもしれぬ.名は「オッケオヤシ(1)」(屁っぴりおばけ),または「オッケルイペ(2)」(屁っこき野郎)という.

2.へっぴりおやじの話

前記の「屁っぴりおばけ」というのは樺太アイヌの日常生活や説話の中に出てくるおばけである.おばけなどというよりは,おやじと呼びたいくらい邪気のないおばけだ.このおやじの放屁の偉力を示す説話をひとつ,次に紹介しておく.

ヤイレスポ(3)とパーリオンナイ(4)が隣りあって住んでいた.

ある日パーリオンナイは部下を連れて舟をつくりに川上へのぼって行き,舟をつくりあげてそれに乗って下って来ると,川岸に一人の若者がいて,

「パーリオンナイさん,私を舟にのっけてつれて行ってくれないか」

と言うので,その男をのせて下って行くと,男は舟にゆられゆられ

ナンタテレケ ヨーイトサ

(船首へよろよろ ヨーイトサ)

ウンタテレケ ヨーイトサ

(船尾へよろよろ ヨーイトサ)

と歌っていたが,とつぜん,

ポア と放屁した.そのため舟は船首の所まで裂けてしまった.男は舟から飛びだして逃げてしまった.パーリオンナイは部下とともに川へ落ちて流れただよい,やっとのことで家へ帰りついた.

それから二日たち三日たって,こんどはヤイレスポが部下をつれて舟をつくりに山へ行った.そして二日がかりで舟をつくって,それに乗って川を下って来ると,川岸の砂の上に一人の男がいて,

「ヤイレスポのだんな,私を舟にのっけてつれて行ってくれませんか」

とたのんだ.ヤイレスポが,

「おや,へっぴりおやじではないか.なんだってお前,舟なんかにのりたがるのだ.だめだ,だめだ」

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