南北
本文約19,400字 ・ 読了時間 約39分
あらすじ(AIが作成しました)
秋の収穫を終えた村で、長年確執を抱える秋三と勘次が激しく乱闘する。二人の家は親戚関係にあるが、過去の家産没落と恩讐を巡り絶縁状態にあった。ある日、秋三はかつて村を去った安次という男と再会する。衰弱した安次を勘次の家へ無理やり送り込むことで嫌がらせを企てる秋三。その後、安次は勘次の家で亡くなるが、棺桶の用意や遺体の扱いに端を発し、再び二人の激しい揉み合いが勃発。死体の上で争い続ける彼らの姿が描かれる。
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一
村では秋の収穫時が済んだ。夏から延ばされていた消防慰労会が、寺の本堂で催された。漸く一座に酒が廻った。
その時、突然一枚の唐紙が激しい音を立てて、内側へ倒れて来た。それと同時に、秋三と勘次の塊りは組み合ったまま本堂の中へ転り込んだ。一座の者は膝を立てた。
暫くすると、人々に腕を持たれた秋三は勘次を睥み乍ら、裸体の肩口を押し出して、
「放せ、放せ。」と叫んでいた。
勘次はただ黙って突き立ったまま、ひた押しに秋三の方へ進もうとした。
「今日という今日は、承知せんぞ!」
「何にッ!」
二人は羽がい締めにされた闘鶏のように、また人々の腕の中で怒り立った。
「放してくれ、此奴逝わさにゃ、腹の虫が納るかい。」
「泣きやがるな!」
「何にッ!」
秋三は人々を振り切った。そして、勘次の胸をめがけて突きかかると、二人はまた一つの塊りになって畳の上へぶっ倒れた。酒が流れた。唐の芋が転がった。
「抛り出せ。」
「なぐれ。」
「やれやれ。」
騒ぎの中に二人の塊りは腰高障子を蹴脱した。と、再びそこから高縁の上へ転がると、間もなく裸体の四つの足が、空間を蹴りつけ裏庭の赤万両の上へ落ち込んだ。葛と銀杏の小鉢が蹴り倒された。勘次は飛び起きた。そして、裏庭を突き切って墓場の方へ馳け出すと、秋三は胸を拡げてその後から追っ馳けた。
二