TRENDIA CLASSIC

南北

横光利一

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村では秋の収穫時が済んだ。夏から延ばされていた消防慰労会が、寺の本堂で催された。漸く一座に酒が廻った。

その時、突然一枚の唐紙が激しい音を立てて、内側へ倒れて来た。それと同時に、秋三と勘次の塊りは組み合ったまま本堂の中へ転り込んだ。一座の者は膝を立てた。

暫くすると、人々に腕を持たれた秋三は勘次を睥み乍ら、裸体の肩口を押し出して、

「放せ、放せ。」と叫んでいた。

勘次はただ黙って突き立ったまま、ひた押しに秋三の方へ進もうとした。

「今日という今日は、承知せんぞ!」

「何にッ!」

二人は羽がい締めにされた闘鶏のように、また人々の腕の中で怒り立った。

「放してくれ、此奴逝わさにゃ、腹の虫が納るかい。」

「泣きやがるな!」

「何にッ!」

秋三は人々を振り切った。そして、勘次の胸をめがけて突きかかると、二人はまた一つの塊りになって畳の上へぶっ倒れた。酒が流れた。唐の芋が転がった。

「抛り出せ。」

「なぐれ。」

「やれやれ。」

騒ぎの中に二人の塊りは腰高障子を蹴脱した。と、再びそこから高縁の上へ転がると、間もなく裸体の四つの足が、空間を蹴りつけ裏庭の赤万両の上へ落ち込んだ。葛と銀杏の小鉢が蹴り倒された。勘次は飛び起きた。そして、裏庭を突き切って墓場の方へ馳け出すと、秋三は胸を拡げてその後から追っ馳けた。

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