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TORENDIA

菓子の譜

本文約1,000字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

明治時代の海軍軍医は、寄港地で名物の菓子を買い求め、その色や形を実物大で写生帖に残す習慣を持っていた。重さや値段まで詳細に記されたその記録は、軍医の菓子への愛着と研究心を示している。自身も菓子を愛する著者は、軍医の話に触発され、各地の菓子に添えられた名札や包み紙、詩歌の入った小箋などの収集を始める。本書は、菓子にまつわる品々と共に辿る、過ぎ去った時代への追憶と蒐集の愉しみを綴る。

岩本素白

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🎧 菓子の譜 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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いま生きて居れば、すくなくとも百ちかい年の人であらう。或は百を踰える年なのかも知れない。明治時代の海軍の軍医である。その頃の軍艦といふものは、厳めしくはあるが同時に美しいもので、それはただ平和を保障する象徴のやうな時代であつた。ふねも小さく、たかだか二三千噸のものが大きい方で、到るところの小さい港まで訪問して、人民たちに敬はれ、喜ばれ、珍しがられ、愛された時代であった[#「あった」はママ]。

その軍医は非常な甘い物好きで、始終胃をわるくして居た。所謂医者の不養生であつた。ふねが港にはいると、取りあへず其処の名物の菓子を買つて来た。さうしてそれを眺め、それを味ひ、それから一々丁寧にそれを写生した。絵の巧い人で、絵の具をさして実物大に写生した。それだけの写生帖があつて、時と所と菓子の名前と、さうして目方と価とが記された。永年のことで、菓子の種類は夥しい数に上つた。静かな航海中、用の無い時は独りその写生帳を取り出し、その美しい色や形を眺め、その味ひを思ひ出して楽しんだ。

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