TORENDIA
雨の宿
岩本素白
TORENDIA
雨の宿
本文約2,000字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
京都の秋を訪ねた著者が、中京の古風でひっそりとした宿で雨の夜を過ごす様子を綴る。三本木の紹介を頼りに偶然辿り着いた宿で、中庭の白壁や松の緑を眺めながら静かな時間を送る。時折強く降る雨の音に旅の焦燥を鎮め、夜明けに遠くの寺々から聞こえる鐘の音に耳を傾ける。雨ゆえの旅程の変更に思いを巡らせ、京都ならではの穏やかな滞在と、苔むした寺院や特別展への期待を静かに抱きながら目覚めるまでを描く。
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🎧 雨の宿 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら
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久し振りで京都の秋を観ようと、十月十五日の朝東京駅を発つ時、偶然会った山内義雄さんから、お宿はと聞かれて、実は志す家はあるが通知もしてないことをいうと、それでは万一の場合にと、名刺に書き添えた紹介を下すったが、それは鴨川に近い三本木という、かねて私もひそかに見当をつけたことのある静かな佳い場所であった。然し実際私の落ちついたのは、中京も淋しい位静かな町筋の、暗く奥深い呉服屋や、古い扇屋、袋物みせ、さては何を商う家とも、よそ土地の者には一寸分りかねるような家々に挟まれた、まことに古風な小さな宿である。