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TORENDIA

机の上のもの

本文約640字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

机の上に置かれた文鎮やペン皿、唐獅子といった細々とした品々を手がかりに、持ち主の好みや生活の跡を綴る。山羊の焼物や従妹から贈られたペン軸、琉球の女性から譲り受けた唐獅子など、それぞれの由来を語りつつ、日常の小物が織りなす情景と、それらを見つめる際の細やかな心象風景を収める。所有者の来歴や想い出が刻まれた身の回りの品々を通じて、ささやかな暮らしの中にある静かな喜びや、ものに宿る物語を丁寧に描き出す随筆である。

宮本百合子

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🎧 机の上のもの / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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机の上に年中おいて使っているいろんな細々とした品物は、きっとその人その人の好みや暮しかたをあらわしていて、面白いものなのだろうと思う。

平凡でただゆったりしているのが便利な私の机の上にいつもあるのは、山羊の焼物の文鎮、紺色のこれも焼物の硯屏。それからそこいらの文房具屋にざらにあるガラスのペン皿。そのなかには青赤エンピツだの小鋏、万年筆、帳綴じの類が入っている。アテナ・インクの瓶がそのまんま置いてあって、そこへペン先をもって行っては書いているのだが、そのペン軸を従妹がくれたのは、もう何年前のことだったろう。私が悄気て鎌倉にいた従妹の家へふらりと行ったりした頃、貰ったものだ。

やきものの山羊は父が昔くれたもの。嘗て柳行李のなかから、紺絣の着物や、目醒し時計と一緒くたに出て来たガラスのペン皿は、わったりしたくないと思ってつかっている。

琉球のある女のひとがくれた一対の小さい岱赭色の土製の唐獅子が、紺色の硯屏の前においてある。この唐獅子は、その女のひととつき合のある幾軒もの家にあるのだろうと思うが、牡の方はその口をわんぐりと開いていることで見わけるのだそうだ。ところがこうやってしげしげその顔を眺めていると、豪魁そうに舌まで見せて口をかっと開いている牡の方が人のいい親爺に感じられ、却って口をつむんで傍にひかえている牝の表情に、ひとくせ籠ったものがある。じっと見ていると笑えて来る。

やすくて生のいい花をうる店が近所にあったらどんなに嬉しいだろうと思っている。

〔一九三九年十二月〕

完

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