TRENDIA CLASSIC

「霜柱の研究」について

中谷宇吉郎

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同窓の友人M君から自由学園学術叢書第一を贈られたので早速読んで見た。この小冊子には霜柱の研究と布の保温の研究とが収められていて、研究者は自然科学グループという名前であったが、内容を見ると五、六人の学園の御嬢さんの共同研究であることが分った。

初めの霜柱の研究というのを何気なく四、五頁読んで行くうちに、私はこれはひょっとしたら大変なものかも知れないという気がしたのでゆっくり注意しながら先へ読み進んで行った。それというのは、この研究者たちは普通私たちが毎日読み馴れている専門の物理の論文とはちょっと型の変った行き方をしているのであった。いわば素人の研究であって、しかも私がはっという気がしたのは、その素人の研究が、純粋な興味と直観的な推理とで如何にも造作ないという風に一歩一歩と先へ進んで行っていることであった。私は前から物理的の研究方法というものは、物理学の既知の知識とはまた別のもので、沢山の本や論文の中に累積している今までの物理学上の知識というものを余り良く知らなくても、或る場合には、立派な物理的の研究が出来得るものだろうという気持を持っていたのである。ところがこの霜柱の研究を読んでみると、その最も良い例がこれであると断言して良いと思われて来たのである。これは誠にそういう意味で、広く天下に紹介すべき貴重な文献であるということが、読み終って確信されたのである。

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