TRENDIA CLASSIC

利根川の岸邊より

萩原朔太郎

🎧 聞ける化(音声で聴く)
朗読音声: VOICEVOX:青山龍星
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こころにひまなく詠嘆は流れいづ、 その流れいづる日のせきがたく、 やよひも櫻の芽をふくみ、 土によめなはさけびたり。 まひる利根川のほとりを歩めば、 二人歩めばしばなくつぐみ、 つぐみの鳴くに感じたるわが友のしんじつは尚深けれども、 いまもわが身の身うちよりもえいづる、 永日の嘆きはいやさらにときがたし、 まことに故郷の春はさびしく、 ここらへて山際の雪消ゆるを見ず。 我等利根川の岸邊に立てば、 さらさらと洋紙は水にすべり落ち、 いろあかき魚のひとむれ、 しねりつつ友が手に泳ぐを見たり。 (室生犀星氏に)

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