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TORENDIA

よき祖母上に

本文約570字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

柘榴の花が咲き、陽光が降り注ぐ中庭を舞台に、老いた祖母の面影をたどる詩集である。語り手は、草木に水をやり、周囲の道具に親愛の言葉をかける祖母の姿や、幼少期の自身の記憶を呼び起こす。かつての日々への郷愁と、現在の静かな冬の日に抱く切なさや寂しさを通して、過ぎ去った人生の古い幻像と、今も心に残る祖母の存在を瑞々しく綴る。

萩原朔太郎

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🎧 よき祖母上に / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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かの家の庭にさく柘榴の花、 あかるい日光の中にふるへる空氣のさびしみ、 年老いたる祖母上よ。 そこのじようろにて植木の苗に水をやり給へ、 そこにあるどの草木にも親愛の言葉をかけておやりなさい、 私は前栽のかげにたたずむ、 ちひさなぼけた犬小舍をみる、 かたむきかかつた木製の長椅子をみる、 ああ これら日光の中にちらばふ、もろもろの植物、諸道具、壁土、窓、物置小舍の類、 あかるくして寂しみある中庭の柘榴の花。 祖母上よ、 自然に息づくものの心に手をふれて、 あなたの遠い昔の夢をよび覺してください、 私はをさない子供で、 私の生活は小鳥のやうにいぢらしかつた、 祖母上よ、 なんといふやすらかさで、あなたはあなたの家に眠つてゐることか、 いつもあなたの心にうかぶものは、 をさなくいとけなき私の幸福、 あなたの遠いたましひの故郷で、 よめな、つくしの莖をかむ私のあかいくちびるです。 ああ いくとせもいくとせも前に忘れられたる人生の古い幻像です。 墓場の下の祖母上よ、 今日はまた力なき私の心によみがへり、 私の昔の庭にきて、茂れる青草に水をかけてやつてください、 ああ 古く乾からびた木製の椅子、 庭の隅にかたむける犬小舍、赤い柘榴の花、 祖母上よ、 なにゆゑに、なにゆゑに、かくも私の心は悲しいのか、 このさめざめとしてはてしなき冬の日のいまはしさ、おそろしさ、せつなさ、寂しさを、 墓場の下の祖母上よ。

完

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