TRENDIA CLASSIC

金成マツとユーカラ

知里真志保

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叔母とは2年近く会ってなかった。なにしろ高齢なので老衰が著しく、私がテープレコーダーなどを持参してユーカラの採録に行っても、朗唱に重複が多くて資料になりがたい状態であった。彼女の脳裏に刻みこまれていたユーカラのすべてが記録は留められているわけではなく、今となっては永久に不可能ということになったわけだが、私は私なりに、学問上の損失は少ないと思っている。ぼう大な量のユーカラ伝承者としての金成マツは、その頭脳の老化の故に、既に数年も前から、そう、無形文化財表彰以前に、学問的な重要性を失っていたのである。

金成マツが伝承してくれたユーカラの量は、決して少ないものではない。実際に朗唱する場合には、抑揚のある節まわしを伴うせいもあるが、かなりの長時間を必要とするものであり、通常夕食を終えてからイロリを囲んで始まり、何回かの休憩をとりながら翌日の昼を越すまで続けられることでも、その分量の想像がつくだろうが、それを正確に伝えることができたのは何故であったろうか。

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