あの世の入口
本文約22,800字 ・ 読了時間 約46分
あらすじ(AIが作成しました)
アイヌ語の地名に見られる、あの世へ行く道の入口とされる洞窟や場所を考察する。各地の伝承においてアフンルパ(入る口)等と呼称されるこれらの場所について、先人が残した伝説や信仰の資料を収集・検討する。また、北海道登別にある人工的な竪穴のアフンルパを実地踏査し、その形状や遺跡の特徴を報告する。本稿は、これらの洞窟が本来どのような祭儀に用いられたのか、その実態と宗教的観念を解明するための基礎的な調査資料を提示する。
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まえがき アイヌ語の地名を調べていると、海岸、または河岸の洞窟に、あの世へ行く道の入口だというものが意外に多い。それらの洞窟は、だいたい次のような名で呼ばれている。
(一)アふンパ Ahn-par(入る・口)。アふンパロ Ahn-paro(入る・その口)。――胆振地方で。 (二)アふンルパ Ahn-ru-par(入る・道・口)。アふンルパロ Ahn-ru-paro(入る・道・の口)。――胆振、日高国沙流、旭川市近文などで。 (三)アふンルチャ Ahn-ru-char(入る・道・口)。アふンルチャロ Ahn-ru-charo(入る・道・の口)。――北海道北部地方で。 (四)アふンポール Ahn-poru(入る・洞窟)。――日高国静内地方で。 (五)オまンルパ Omn-ru-par(奥へ行く・道・口)。オまンルパロ Omn-ru-paro(奥へ行く・道・の口)。――胆振、日高などで。 (六)うぇンルパ Wn-ru-par(悪い・道・口)。うぇンルパロ Wn-ru-paro(悪い・道・の口)。――石狩国上川地方で。 (七)オぽナル O-pkna-ru(そこから・下方へ行く・道)。――北見国網走地方で。 (八)ぽールチャ Pru-char(洞窟の・口)――日高国様似地方で。 (九)ぽール Pru(洞窟)。――北海道いっぱん。 (十)※[#半濁点付き平仮名と、139-8]ッソ Tsso(洞窟)。――樺太いっぱん。 (十一)ペしゅィ Pesy(洞窟)。――北海道北見・釧路地方で。 これらの中には、たんに洞窟の意にすぎないものもあるが、大体は名そのものがあの世へ行く道の入口であることを示しているものが多く、それにからんでいろいろと伝説や信仰が語り伝えられているのがふつうである。
この種の洞窟は海岸や河岸の断崖にある横穴とふつうには考えられているようであるが、かならずしもそうではない。滝つぼがそれだというのもあり、海中の岩礁についている穴であることもある。さいきん調査した登別のアフンルパは、高台の上に人為的に掘った竪穴であった。