本文へ移動
TORENDIA

学問ある蛙の話

本文約2,800字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

アイヌ語の地名や語彙に対する既存の研究者の解釈を検証し、言語学的な誤りとその背景にある心理を論じる。桃太郎の逸話を引き合いに、無理な理屈で合理化しようとする先行研究の傾向を指摘する。アイヌ特有の空間認識や自然観に基づき、地名「ホロカ」や食材「ルイペ」の正しい意味を考察する。先入観を排し、対象となる文化の心理に即した正確な語彙解釈の重要性を説く一編である。

知里真志保

速度
🎧 学問ある蛙の話 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 4

桃太郎の昔話をアイヌ語研究の先輩連に語らせるときっと面白いことになるだろうと思う。昔々、爺さんと婆さんがあった、爺さんがある日川へ洗濯に行った(註1あいにく婆さんはその日病気で動けなかったのである)すると川の下の方から大きな桃が流れて来た(註2これは誤植ではない。丁度その時満潮で川の水が逆流していたのである)まず、ざっとこんなぐあいになるかと思う。話がともすれば理屈に合わなくなる。するとそのつじつまを合わせるためにいかにも尤もらしい説明を加えたがる。それがこの人達の特徴である。その好い(?)例の一つが、次に述べるホロカの附く地名の解釈である。

アイヌ語にホロカという語があり、バチラー辞書はこれを副詞として「後方へ向って」という解釈しか示していないが、本来は動詞であって「後へ戻る」という意味である。この語が形容詞として川の名を構成し、殆ど全道に亘って分布している。今ちょっと手許にある永田方正の『北海道蝦夷語地名解』(第四版)に当ってみるだけでも、次のように数多く見出される。(地名の解釈も永田氏による。)

知里真志保の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本