TRENDIA CLASSIC

哀詩数篇

漢那浪笛

1 / 1

くらがり

なすによしなき哀れさよ、

早や日数経て、今日の日も

暗がりわたる物おもひ。

水や空なる波の上に、

淋しくかゝる綾雲は、

やがて消ゆべき希望かや。

その希望もて吾が道は、

深海の底の青貝の、

螺線の中のゆきもどり。

物の幾度□貝□葉に、

灰色なせる涙もて、

悲哀の文字を印せしも、

暗き深みのみなぞこの、

声も言葉もかよわねば、

昨日も今日も、かくて暮れゆく。

暮の鐘

灰色の雲かさなりて、

黄昏は死人のけわひ。

しく/\と泣きいる風は、

谷隈の底をはひ出で、

黄ばみたる木立はらひぬ。

冷やかな自然よ君と、

今日も又、かくて暮れゆく、

哀音の鐘の響きは、

痛みたる君が胸より、

傷た振るる、苦患の声か。

うなだるる眼ひらきて

黄昏の空を仰げば

奥津城の岩のほとりの、

小山なす屍の上に、

胸もどき声をきゝしる。

漢那浪笛の他の作品