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TORENDIA

十二ヶ月

本文約550字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

一月から十二月まで、月ごとに移ろいゆく季節の情景や営みを詩情豊かに綴る。冬の冷え込みから春の萌芽、夏の熱気と海辺の光景、秋の静寂を経て年の瀬へ至るまで、繊細な感性で切り取られた心象風景を収める。日常の些細な断片や自然の変化、そこに宿る少年や男女の情感を鮮やかに描き出し、時が流れる中で次第に深まる孤独や「来年」を予感させる気配までを叙情的な言葉で描き出す。

竹内浩三

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🎧 十二ヶ月 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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一月――

凍てた空気に灯がついた

電線が口笛を吹いて

紙くずが舞上った

木の葉が鳴った

スチュウがノドを流れた

二月――

丸い大きな灰色の屋根

真白い平な地面

つけっぱなしのラムプが

低うく地に落ちて

白が灰色に変った

三月――

灰色はコバルトに変り

白は茶色に変った

手を開けたら

汗のにおいが少しした

四月――

ごらん

おたまじゃくしを

白い雲を

そして若い緑を

五月――

太陽がクルッと転った

アルコホルが蒸発して

ひばりが落ちた

虫が少し蠢いてみて

また地にもぐりこんで

にやりとした

六月――

少年が丘を登って

苺を見つけて

それを口へ入れ

なみだぐんだ

七月――

海が白い歯を見せ

女が胸のふくらみを現す

入道雲が怒りを示せば

男はそっと手をさしのべる

ボートがゆれた

八月――

ウエハースがべとついて

クリームが溶けはじめた

その香をしたった蟻が

畳の間におちこんで

蟻の世界に椿事が起り

蝉が松でジーッとないた

九月――

石を投げれば

ボアーンと響きそうな

円い月が

だまって ひとりで

電信柱の変圧器に

ひっかかっていた

十月――

ゲラゲラ笑っていた男が

白い歯を収め 笑いを止めて

ひたいにシワをよせ

何事か想い始めた

炭だわらの陰でコオロギが鳴いた

十一月――

空は高かった

そして青かった

しかし 俺はさみしかった

十二月――

ラムプがじーと鳴って

灯油の終りを告げた

凩が戸をならして

「来年」のしのびやかな

足音も聞えた

完

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