山椒魚
本文約2,800字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
山椒魚の珍味としての魅力や、自身が経験した調理と試食の体験談を綴る。保護動物ゆえに滅多に口にできない希少性と、すっぽんとふぐを合わせたような上品で美味な味わいを詳細に記す。調理時には身から山椒の芳香が漂う様子や、硬い肉を長時間煮込んで仕上げる独自の調理法を紹介し、翌日には皮がトロトロに柔らかくなり一層美味しくなるという特性を明かす。希少な食材に挑む料理人や愛好家たちの交流を通じ、その食文化の側面を伝える。
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ひとつ変ったたべものの話をしよう。
長い間には、ずいぶんいろいろなものを食ったが、いわゆる悪食の中には、そう美味いものはない。
「変ったたべものの中で美味いものは?」
と問われるなら、さしずめ山椒魚と答えておこう。
山椒魚を食うのは、決して悪食ではないが、ご承知のように山椒魚は、保護動物として捕獲を禁止されている上に、どこにもいるというものでないから、滅多に人の口に入らない。その意味から言って、山椒魚は文字通りの珍味であると言えよう。
でも、私が山椒魚を珍味と言うのは、単に珍しいという点ばかりではない。いくら珍しくとも、美味くなければ珍味とは言えない。世の中には珍しがられていても、美味くないしろものがいくらもある。ところが、山椒魚は珍しくて美味い。それゆえにこそ、名実ともに珍味に価すると言えよう。
大分前の話になるが、旧明治座前の八新の主人が、山椒魚料理の体験談を聞かせてくれたことがある。その話の中で、
「山椒魚を殺すには、すりこぎで頭部に一撃を食らわせるんですが、断末魔に、キューと悲鳴をあげる。あの声は、なんとも言えない薄気味悪いもんですな」
と、心から気味悪そうに語った。
中国の『蜀志』という本には、
「山椒魚は木に縛りつけ、棒で叩いて料理する」
と出ているということであるが、山椒魚の料理法など知っているものは、そういないだろう。私も初めて山椒魚を料理するときには、この話を思い出し、その伝でやってみた。
震災前のことだから、大分古い話になるが、水産講習所の所長をしておられた伊谷二郎という人が、山椒魚を三匹手に入れたというので、そのうちの一匹を私に贈ってくれたことがあった。二尺ぐらいのものであったろうか、大体がグロテスクな恰好をしているし、肌もちょっと見は、いかにも気持の悪いものであるが、俎の上に載せてみると、それほど気味悪くは感じない。ガマのような嫌な気はしない。