TRENDIA CLASSIC

持ち味を生かす

北大路魯山人

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生かすことは殺さないことである。生かされているか殺されているかを見分ける力が料理人の力であらねばならぬ。神様が人間に下し給うたとみるべき人間食物の個々の持ち味は、残念でも年を経るに従って、人間の猪口才がすべてを亡ぼしつつあるようだ。

例えば砂糖の乱用が、おのおの持つところの異なった「味」を破壊し、本質を滅茶苦茶にしている如き、それである。砂糖さえ入れれば美味いとする今の料理は、極端に味覚の低下を示している。砂糖や「味の素」類品の跋扈に拍車をかけているのは、料理する者の無定見である。この無定見が、味覚を無神経にし、天然自然によって与えられている個々の美しき「味」に盲目となり、「味」を心に楽しむ世界から葬り去っている。従って、通り一片の栄養学説が栄養受け入れを不充分にしていることは言うまでもない。

物を食うにも、物を楽しむにも、味わう上からも見識があってよい。見識ある食の摂り方は、心身を健全に導くようである。人間を豊かにすることも否めない事実だ。われわれが料理に関心を寄せる点は、ここにもある。美味い美味いの連続で、舌と心をよろこばせ、それが心身の健全に役立つ結果を見ては、並々の関心ですましてはいられない。一途によき指導者を自然の中に求め、たぎる情熱を傾けつづけて来たのは、そんなところにある。それを五十年もつづけて来たのであるから、われながら、たいへんな情熱である。

しかるに私の見る世人の多くはというと、十人が十人、味覚にうとく、美味い不味いの判別を全く欠いているのである。生活に余裕を失った現状にあっては、無理もないことと許せないでもないが、多くの人々の心構えにも間違いがないとは言い切れない。

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