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TORENDIA

暴風への郷愁

本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

沖縄出身の著者が、上京後に経験した東京での生活や雪に対する初印象を振り返り、故郷の猛烈な暴風雨の記憶を綴る随筆。巨大ながじまるの木を折り、家屋を脅かす圧倒的な自然の力を記述し、暴風雨に備えるための沖縄特有の家屋構造や瓦屋根の造りについて詳しく解説する。自身の少年時代を育んだ過酷な自然環境と、現在の生活を対比させながら、暴風への郷愁を浮かび上がらせる作品である。

山之口貘

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🎧 暴風への郷愁 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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郷里の沖縄から、上京したのは大正十一年の秋のことであったがその年の冬に、はじめて、ぼくは雪を見た。本郷台町の下宿屋の二階で、部屋の障子を開けっ放して、中庭に降りつもる雪の白さを、飽かずにながめたことを記憶している。南方生れのぼくは、はじめて見る雪のながめに、つい寒さも忘れて『忠臣蔵』をおもい出していたのであった。その後、同郷出身の友人たちに、きいてみると、雪に対するぼくらの第一印象は、誰もが『忠臣蔵』なのであった。ぼくらは、活動写真の忠臣蔵によってしか、雪を知っていなかったからなのである。いまではしかし、上京当時のことをおもい出さない限り、どんなに雪が降ったところで、忠臣蔵をおもい出すことはなくなってしまったのである。

それから、まもなくのこと、東京というところは、ものごとをバカに、大げさにいうところだとおもった。風が吹くと『暴風』だというので、ぼくなどにはそれがこっけいに感じられたのであった。

しかし、それが結局は、暴風の名産地である沖縄に生れたところのぼくの東京観なのであって、東京あたりでは、十メートル、二十メートルの風速を『暴風』にしておかないと、暴風と名づけられるような、暴風らしい暴風などないからなのだということがわかったのである。

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