TRENDIA CLASSIC

鮪に鰯

山之口貘

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野次馬

これはおどろいたこの家にも

テレビがあったのかいと来たのだが

食うのがやっとの家にだって

テレビはあって結構じゃないかと言うと

貰ったのかいそれとも

買ったのかいと首をかしげるのだ

どちらにしても勝手じゃないかと言うと

買ったのではないだろう

貰ったのだろうと言うわけなのだが

いかにもそれは真実その通りなのだが

おしつけられては腹立たしくて

余計なお世話をするものだと言うと

またしてもどこ吹く風なのか

まさかこれではあるまいと来て

物を掴むしぐさをしてみせるのだ

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ひそかな対決

ぱあではないかとぼくのことを

こともあろうに精神科の

著名なある医学博士が言ったとか

たった一篇ぐらいの詩をつくるのに

一〇〇枚二〇〇枚だのと

原稿用紙を屑にして積み重ねる詩人なのでは

ぱあではないかと言ったとか

ある日ある所でその博士に

はじめてぼくがお目にかかったところ

お名前はかねがね

存じ上げていましたとかで

このごろどうです

詩はいかがですかと来たのだ

いかにもとぼけたことを言うもので

ぱあにしてはどこか

正気にでも見える詩人なのか

お目にかかったついでにひとつ

博士の診断を受けてみるかと

ぼくはおもわぬのでもなかったのだが

お邪魔しましたと腰をあげたのだ

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弾を浴びた島

島の土を踏んだとたんに

ガンジューイ(1)とあいさつしたところ

はいおかげさまで元気ですとか言って

島の人は日本語で来たのだ

郷愁はいささか戸惑いしてしまって

ウチナーグチマディン ムル(2)

イクサニ サッタルバスイ(3)と言うと

島の人は苦笑したのだが

沖縄語は上手ですねと来たのだ

(1) お元気か

(2) 沖縄方言までもすべて

(3) 戦争でやられたのか

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桃の花

いなかはどこだと

おともだちからきかれて

ミミコは返事にこまったと言うのだ

こまることなどないじゃないか

沖縄じゃないかと言うと

沖縄はパパのいなかで

茨城がママのいなかで

ミミコは東京でみんなまちまちと言うのだ

それでなんと答えたのだときくと

パパは沖縄で

ママが茨城で

ミミコは東京と答えたのだと言うと

一ぷくつけて

ぶらりと表へ出たら

桃の花が咲いていた

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もうお年ですからと言えば

なにをこの青二才がと

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