村一番早慶戦
本文約16,400字 ・ 読了時間 約33分
あらすじ(AIが作成しました)
同じ村の豪農に生まれた一夫と東金は、幼少期からの竹馬の友でありながら、親世代の確執による「村一番」を巡る競争意識に囚われ続けている。互いに友情を感じつつも、周囲の思惑や家柄の対立から素直になれない二人は、大人になってもなおその呪縛に苦悩する。やがて彼らは、親の因縁による犠牲から逃れ、自分たちの意志で未来を切り拓くために、家同士の対立を超えて運命を共有する道を模索していく。
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東金君と僕は何の因果だろう? 小学校から一緒で竹馬の友だ。現在も友情を誓っている。喧嘩一つしたことのない仲だけれど、昨今はお互に好かれと祈らない。始終競争意識に囚われている。僕は込み上げて来ると、東金の奴、失敗すれば宜いと思う。それほどでなくても、先方が此方よりも成功することは面白くない。これは否定出来ない事実だ。先方も矢張り同じような心持でいる。東金君は僕ほど敏感な良心の持主でないから平気かも知れないが、僕は甚だ辛い。時折顧みて、自分の心境に愧じ入ることがある。真に愚劣な経緯だけれど、乗りかけた舟で今更仕方がない。
坊っちゃん同志
僕と東金君は同じ村に生れた。僕の家は村一番の豪農だった。先祖代々然ういうことに相場が定っていたところへ、東金君の家が村一番を主張し始めたのである。これは何方が余計に田地を持っているか、何方の税金が多いか較べて見れば直ぐ分ることだから、至って簡単な問題だ。自慢ではないが、僕のところでは祖父の代に千俵振舞いというのをやった。年貢米が千俵入るようになったお祝いだ。村中を招待するのに五日かゝったと言い伝えられている。その折、東金君のお祖父さんは毎日顔を出して、ヨイ/\/\シヤン/\/\と[#「シヤン/\/\と」はママ]手を締める音頭を取ったものだそうだ。して見ると、東金君のところは僕の家の子分だったのである。その頃十六ミリがなかったのは東金家に取って仕合せだ。あったら写真に取って置いて文句を言わせない。しかし僕のところはその後父の代に生糸工場をやって失敗した。それから県会議員の候補に担ぎ上げられて、これも巧く行かなかった。そんな関係で年貢が余程減ったのらしい。僕が生れる前後のことだった。因みに僕は両親がかなり年を取ってからの一粒種である。