英米笑話秀逸
本文約2,000字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
英米の人々が愛好する笑話の数々を収める。食卓の社交を円滑にする道具として、カナダのユーモリストが推奨する逸話や、日常生活の中で生じる滑稽なやり取り、子供の機転や皮肉の効いた会話など、多様な滑稽譚を紹介する。旅先での取り違えや、親切心が招く勘違い、レストランや教会での気の利いた応酬などを通じて、ユーモアが持つ人間的な滑稽さと精神のゆとりを描く。
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笑いを好む英米人は笑話を重んじる。食卓では笑話が社交を扶ける。カナダのユーモリスト、スチーヴン・リーコック氏はアメリカ笑話の秀逸として、次の「バッファローで投げ出された男」を推奨している。以下並べたものは、私自身の記憶による。疎開先で参考書がない。もっと優秀なものを伝え得ないのを遣憾とする。
バッファローで投げ出された男
「わしはナイヤガラの滝を見物するんだからバッファローで下りる。バッファローは何時頃になるかね?」
と一人の旅客が寝台車のボーイに訊いた。
「夜明けになります」
「よし、頼むよ。わしは寝坊だから、ナカ/\起きないかも知れない。構わないから、バッファローに着いたら、四の五の言わせず、この荷物ぐるみプラットフォームへ投り出してくれ給え」
「承知いたしました」
翌朝、旅客が目を覚ましたら、もう日は高く、バッファローはとうに通り越していた。ボーイを呼びつけて責めると、
「はてね、それじゃ先刻バッファローで投り出した人は誰だったろう」
親切もの
人の着物に綿や糸屑がついていると、とってやらなければ気の済まない親切ものがある。シンプソン君もその一人だ。或晩芝居へ行ったら、前の席の娘さんの襟から毛糸のほつれが長く出ていた。シンプソン君は手を伸ばしてつまんだが、幾ら手操っても尽きない。その中自分の手に毛糸のマリが出来てしまったので、あわてゝ劇場から逃げ出した。
シンプソン君の親切を受けた令嬢は翌朝姉に向ってこう言った。
「姉さん、変なことがあるものね。私、昨晩お芝居へ行って、チョッキをなくしてしまったわ」
好機会
新しい会堂が出来上って、牧師さんと教会書記が音響の試験をする。説教壇でピンを落した音が座席の隅々まで聞えるようにありたい。
「ずっと後の方へ行って立っていてくれたまえ。もっと後ろ」
と牧師さんは書記に命じて、聖書を読み始めた。
「よく聞えます」
「今度は、君、説教壇に立って、何か言って見給え」
書記が説教壇に上った。
「何を言いましょうか?」
「何でも思うことを言って見給え」
「物価はマス/\あがります。聞えますか?」
「聞える。聞える」