合縁奇縁
本文約11,300字 ・ 読了時間 約23分
あらすじ(AIが作成しました)
貧乏寺に生まれた瑞竜は、大学進学を望みつつも学資の工面に苦しんでいた。そんな中、寺の婿養子の縁談が舞い込み一度は承諾するが、大檀那の後援の申し出により翻意する。しかし後援者は急死し、瑞竜は再び困窮する。その後、進学を果たした瑞竜は、縁あって再び寺の娘との縁談に関わることになるが、皮肉にもその相手もお寺の娘であった。本作は、出家を巡る葛藤や縁談の失敗を重ねながら、世の無常と数奇な運命を綴る。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
💰 この本を応援する(投げ銭)
第一回の失敗
「瑞竜、お前は養子に行く気はないか? 相手にもよりけりだろうが、随明寺なら申分あるまい?」
と兄貴がニコ/\して切り出した。さては来たなと僕は思った。随明寺の総領娘錦子さんはナカ/\綺麗な子だった。此方が又、自慢ではないが、秀才の誉れ高かった。その辺は寺町といって、お寺ばかり十何軒並んでいるから、皆お互に見知り越しだった。中学生と女学生だから親しい面晤はなかったが、僕は途上でチョッカイをかけたことがある。
「もし/\。ハンカチが落ちましたよ」
学校の帰りに擦れ違った時、注意してやった。錦子さんは振り返ったが、嘘と分って、
「まあ! 不良さんね、イヽン」
と言って、行ってしまった。以来僕を見かけると、空嘯くようにして通って行く。
さて、その錦子さんのところへ婿養子に貰われて行く問題だ。
「今日東光寺さんが見えて、お互に身許が分っているから丁度好い縁談だと思うが、何んなものだろうと言う」
兄貴は僕の無条件承諾を期待しているように浴びせかけた。
「随明寺へ行けば、矢っ張りお寺を継ぐんでしょう?」
「それは当り前だ。その為めの養子だから」
「僕、坊主は厭です」
「こら、坊主とは何だ?」
「お坊さんは嫌いです」
「何も分らないで、未だ贅沢を言っているのか?」
「…………」
この問答でも分る通り、僕のところはお寺だ。しかし僕は既に坊さんになりたくないことを言明していた。それに対して、兄貴は坊さんが一番間違いないから考え直せと言っていたのだった。僕は別に望みがあった。大学へ行って法科をやって官吏になりたいと思っていた。
「すると何うする?」
「大学へ行きたいんです」
「しかし学資は出せないよ。お前も承知の通り、家は貧乏寺だから」
「…………」
「随明寺へ養子に行けば、大学へやって貰える。法科はいけないけれど、哲学を勉強すれば、先生になれる。官立学校の先生なら官吏だぞ」
「帝大へやってくれると先方で言うんですか?」
「修業は充分させてくれるさ。元来お前の成績を聞き知って懇望するんだから、その辺は何うにでも話をつけてやる」
「哲学以外はいけないでしょうか?」
「無論さ。お寺を継ぐんだから、哲学も東洋哲学に限る」