TRENDIA CLASSIC

フランセスの顔

有島武郎

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たけなわな秋のある一夜。

光の綾を織り出した星々の地色は、底光りのする大空の紺青だった。その大空は地の果てから地の果てにまで広がっていた[#「広がっていた」は底本では「拡がっていた」]。

淋しく枯れ渡った一叢の黄金色の玉蜀黍[#「玉蜀黍」は底本では「玉蜀黎」]、細い蔓――その蔓はもう霜枯れていた――から奇蹟のように育ち上がった大きな真赤なパムプキン。最後の審判の喇叭でも待つように、ささやきもせず立ち連なった黄葉の林。それらの秋のシンボルを静かに乗せて暗に包ませた大地の色は、鈍色の[#「鈍色の」は底本では「鈍色に」]黒ずんだ紫だった。そのたけなわな秋の一夜のこと。

私たちは彼女の家に近づいた。末の妹のカロラインが、つきまとわる[#「つきまとわる」は底本では「つきまつわる」]サン・ベルナール種のレックスを押しのけながら、逸早く戸を開けると、石油ランプの琥珀色の光が焔の剣のような一筋のまぶしさを広縁に投げた。私と連れ立った彼女の兄たちと妹とは、孤独の客のいるのも忘れて、蛾のように光と父母とを目がけて駆け込んだ。私は少し当惑してはいるのをためらった。ばね仕掛けであるはずの戸が自然にしまらないのを不思議に思ってふと気がつくと、彼女が静かにハンドルを握りながら、ほほえんで立っていた。私は彼女にはいれと言った。彼女は黙ったまま軽くかぶりをふって、少しはにかみながらそれでもじっと私の目を見詰めて動こうとはしなかった。私は心から嬉しく思って先にはいった。その瞬間から私は彼女を強く愛した。

フランセス――しかし人々は彼女を愛してファニーと呼ぶのだ。

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