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TORENDIA

梯梧の花

本文約2,400字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

著者自身の幼い日の記憶を辿り、沖縄で日常的に親しまれた花である仏桑華と梯梧について綴る。乳離れの際に経験した唐辛子の出来事とともに思い起こされる仏桑華の情景や、その特徴を解説する。また、沖縄の情熱の象徴として愛でられた梯梧の姿を回想しながら、戦後の沖縄が変貌を遂げた現状に触れ、かつての故郷の姿が失われたことへの複雑な心情や、変わりゆく土地で花たちが置かれている状況を憂う。

山之口貘

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🎧 梯梧の花 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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ぼくが、まだ、おっぱいをのんでいたころのある日のことである。母のおっぱいに吸いついたのであったが、すぐに、おっぱいを突っ放して、ぼくは泣き出してしまった。ぼくのことを離乳させるために、母がその乳首のところに唐辛をつけてあったからなのである。ぼくは、泣きながら、台所にあった小さな水桶を引き摺って来て、その水に手をぬらしては、母の乳首を懸命に洗ったことを記憶しているのである。だが、洗ってから、おっぱいをのんだかどうかは、さっぱり記憶にはないのだ。しかし、そのことは、おそらく、ぼくの人生の最初の大事件なのであったに違いなく、ぼくの記憶の一番古いものとして、いまでも時に思い出すことなのだ。そしてそのたびに、ぼくは仏桑華の花をおもい出さずにはいられないのであるが、それはあのころ泣きながらも、ぼくの眼に、仏桑華の花がちらついて見えていたことを覚えているからなのであろう。一本の仏桑華が、当時の家の庭(実は庭ではなかった。縁側の面しているわずかばかりの空地なのであった。)の片隅に、生えていたのだ。

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