雲母集
本文約17,400字 ・ 読了時間 約35分
あらすじ(AIが作成しました)
三崎に移り住んだ著者が、三崎での生活を通じて詠んだ歌を収める。異国情緒漂う三崎の海や土地の動植物、日々接する新鮮な魚介や農作物など、目の前の光景をありのままに見つめる。最初は歓喜に満ちていた心がやがて鬱悶し、次第に法悦へと至る心情の変化を詩歌の連なりを通して綴る。日常の断片を鮮やかに切り取り、自らの信念を投影した三崎での生活記録であり、自己を救い出す過程を体系的に描き出す。
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きらら。 雲母。うんも。玉のたぐひにて、五色のひかりあり。深山の石の間にいでくるものにて、紙をかさねたるごとくかさなりあひて、剥げば、よくはがれて、うすく、紙のやうになれども、火にいれてもやけず。水にいれてもぬるゝことなし。和名(雲母和名、[#改行]岐良々)
『日本大辞林』
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新生 序歌
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力
煌々と光りて動く山ひとつ押し傾けて来る力はも
卵
煌々と光りて深き巣のなかは卵ばつかりつまりけるかも
大きなる手があらはれて昼深し上から卵をつかみけるかも
かなしきは春画の上にころがれる七面鳥の卵なりけり
大鴉
大鴉一羽渚に黙ふかしうしろにうごく漣の列
大鴉一羽地に下り昼深しそれを眺めてまた一羽来し
昼渚人し見えねば大鴉はつたりと雌を圧へぬるかも
大鴉渚歩けど麗らなる波はそこまでとどかざりけり
寂光の浜に群れゐる大鴉それの真上にまた一羽来し
一羽飛び二羽飛び三羽飛び四羽五羽飛び大鴉いちどに飛びにけるかも
大空の下にしまし伏したり病鴉生きて飛び立つ最後に一羽
犬
水の面に白きむく犬姿うつし口には燃ゆる紅の肉
丸木橋の上と下とを真白きもの煌々として通りけるかも
魚介三品
水の面に光ひそまり昼深しぬつと海亀息吹きにたり
日ざかりは巌を動かす海蛆もぱつたりと息をひそめけるかも
鱶は大地の上は歩かねばそこにごろりところがりにけり
穴
ふかぶかと眼ひらけばどん底に何か光りて渦巻くらしも
薔薇
盤石に圧し伏せられし薔薇の花石をはねのけ照深みかも
雲
大空に何も無ければ入道雲むくりむくりと湧きにけるかも
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流離抄
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三崎哀傷歌
大正二年一月二日、哀傷のあまりただひとり海を越えて三崎に渡る。淹留旬日、幸に命ありてひとまづ都に帰る。これわが流離のはじめなり。
前夜
雪深し黙みゐたれば紅の月いで方となりにけるかな
河口
思ひきや霧の晴間のみをつくし光りゆらめく河下見れば
朝霧にかぎり知られぬみをつくしかぎりも知らぬ恋もするかな
朝霧に光りゆらめくみをつくしいまだ死なむと吾が思はなくに
三崎真福寺
日だまりに光りゆらめく黄薔薇ゆすり動かしてゐる鳥のあり