本文へ移動
TORENDIA

盲目物語

本文約73,900字 ・ 読了時間 約148分

あらすじ(AIが作成しました)

近江国長浜出身の盲目の法師が、かつて仕えた浅井長政の城での日々や、織田信長の妹・お市の方との縁、そして本能寺の変後の混乱など、自身の見聞きした戦国時代の出来事を回想する。盲目でありながら城中での奉公を通じて主君たちの愛憎や動乱の様を目撃した語り手が、その数奇な運命と記憶を後世に残すよう請い、かつての主君の周辺で起きた波乱の物語を語る。

谷崎潤一郎

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 73

わたくし生国は近江のくに長浜在でござりまして、たんじょうは天文にじゅう一ねん、みずのえねのとしでござりますから、当年は幾つになりまするやら。左様、左様、六十五さい、いえ、六さい、に相成りましょうか。左様でござります、両眼をうしないましたのは四つのときと申すことでござります。はじめは物のかたちなどほの/″\見えておりまして、おうみの湖の水の色が晴れた日などにひとみに明う映りましたのを今に覚えておりまするくらい。なれどもそのゝち一ねんとたゝぬあいだにまったくめしいになりまして、かみしんじんもいたしましたがなんのきゝめもござりませなんだ。おやは百姓でござりましたが、十のとしに父をうしない、十三のとしに母をうしのうてしまいまして、もうそれからと申すものは所の衆のなさけにすがり、人のあしこしを揉むすべをおぼえて、かつ/\世過ぎをいたしておりました。とこうするうち、たしか十八か九のとしでござりました、ふとしたことから小谷のお城へ御奉公を取り持ってくれるお人がござりまして、そのおかたの肝いりであの御城中へ住み込むようになったのでござります。

谷崎潤一郎の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本