編輯室より
本文約720字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
従妹へ宛てた手紙の執筆過程における葛藤や、知識への渇望を綴る。中島訳『サアニン』への感想を抱きながらも、それを批評する自信や時間の欠如を省みる。また『新婦人』に掲載された自身の談話が、意図しない内容に歪められたことへの憤怒と恥辱を記す。執筆への真摯な姿勢と、自身の思想を歪められることへの不快感を吐露し、自らの言葉で書き続けることの重要性を再確認する。
💰 この本を応援する(投げ銭)
□今月号の従妹に宛てた私の手紙は実におはづかしいものだ。私はあのまゝでは発表したくなかつた。もう少ししつかりしたものにして発表したかつた。併し日数がせつぱつまつてから出さうと約束したので一端書きかけて止めておいたのをまた書きつぎかけたのだけれどもどうしても気持がはぐれてゐて書けないので、胡麻化してしまつた。本当にいけないことだと自覚はして居る。この償ひとして来月号には本当に一生懸命に書くつもり。何うか皆様あしからず。
□時間が欲しい。もつと/\確りした智識が欲しい。中島氏訳の「サアニン」をよんだ。すつかり引きつけられたやうな気持がする。感想を書きたいけれども充分に断片的に浮んで来る一つ/\の考へを統一するに要する丈けの時間を持たない。一々しつかりした断定を下すに躊躇しなくてもいゝ程の自信ある根底の智識を持たないのがはづかしいと思ふ。まだあんなものを批評するに充分な資格は自分にはないのだ。本当に立派な智識が欲しい。
□「新婦人」の一月号に私の談話が載せてある。然しそれは私がその雑誌の記者と称する人に話したことゝは大変に相違した事柄である。下等な愚劣な向不見なそして軽率な鼻持ちのならないことばかり並べてある。私は到底それを読んで憤怒を覚えずにはゐられなかつた。又、多数の人たちに自分の談話としてそれが読まれるのだと思つたとき私は涙がにじむ程の恥かしさを感じた。私はあの記者が手前勝手なことばかりを考へて私の思想を表現する談話に何の尊敬も注意も加へないでとりあつかつたと云ふことが不快でならない。私は矢張り物を言はないで書いてゐたい。もうほんとにおはなしなんかするもんぢやないとしみ/″\思ふ。 [『青鞜』第四巻第三号、一九一四年三月号]
完