TRENDIA CLASSIC

ガラマサどん

佐々木邦

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失業の名人

長男が小学校へ入学して、初めての成績が全甲だった時、妻は、

「矢っ張りこの子は頭が好いわ」

と得意になった。

「おれに似たんだ」

と私は主張した。

「オホヽ」

「何だい?」

「然うでございましょうよ」

「無論さ」

「あなただって決して足らない方じゃありませんから」

と妻は日頃持っている見積りの一端を洩らした。

「当り前よ。見括るな」

「だから、好いって申上げているじゃありませんか?」

「何処へ出たって押しも押されもしない」

「しかし……」

「何だい?」

「勤め運が悪いんですわ」

「然うさ。頭は好いんだけれど」

「あなた、大丈夫?」

「安心していろ。首になったって、饑じい思いはさせない」

と私は消極的の保証しか与えられない。

「…………」

「心配かい?」

「えゝ」

「何故?」

「あなたは落ちついた頃が一番危いんですから」

「取越苦労をしたって仕方がない。今の会社にばかり日が照りはしまいし」

「そんなことを仰有るところを見ると、又ソロ/\怪しいんじゃございませんの?」

「大丈夫だよ。万一いけないにしても、直ぐに後を探す」

「あなたは後を探すことにかけると名人ね」

「失業しても一月と遊んだことはない」

「そこ丈けは本当に豪いわ」

と妻も認めてくれた。但し、探す方が名人なら、失う方も名人ということになる。失わなければ探す必要がない。

実際、私は勤め運の好くない男である。学校を出て直ぐに入った会社は特別に優遇してくれたが、三年目に潰れてしまった。事情が事情だから、涙金を貰うどころか、俸給を一月分倒された。最初その会社へ私を推薦してくれた先輩の三好さんは、

「それは君の責任じゃない。不可抗力だ」

と同情して、その月の中に一流新聞社の口を探してくれた。私はホッと息をついた。結婚したばかりだったから、長く遊んでいると妻の信用がなくなる。その当座の心持を忘れずに辛抱すれば宜かったのだが、上役に一人意地の悪い辣腕家がいて、その機嫌が取り兼ねた。此奴に泣かされたのは私ばかりでない。同難の向きが大勢あった。一年たって席稍暖まると共に、私は多少義侠心が手伝って、美事正面衝突をやってしまった。面を見るのも厭だったから、三四日病気欠勤していたら、

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