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TORENDIA

文化史上の寺田寅彦先生

本文約4,000字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

物理学者であり、夏目漱石門下の随筆家・吉村冬彦としても知られた寺田寅彦の全貌を論じる。科学研究と文学的随筆という一見相反する二つの活動が、本人の生活と趣味の中で渾然と融合していた様子を描写する。また、地球物理学などの専門的な事績に加え、晩年に探求していた「新物理学」の構想や、随筆文学を向上させた功績を振り返り、現代日本の文化に多大な貢献をした先駆者としての肖像を多角的に綴る。

中谷宇吉郎

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🎧 文化史上の寺田寅彦先生 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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現代のわが国のもった最も綜合的な文化の恩人たる故寺田寅彦先生の全貌を語ることは、今日の日本のもつ教養の最高峰を語ることであって、単に物理学の部門での先生の一門下生たる自分などのなし得るところではないかも知れないが、何人がその任に当っても恐らく非常に困難なことであろう。

先生は、外見上は全く異なる二方面において、今日のわが国の文化の最高標準を示す活動を続けられていた。その一は物理学者としてであって、帝国学士院会員、東京帝大教授としてのほかに理化学研究所、地震研究所、航空研究所において、それぞれ研究室を持ち、多彩の研究をほとんど間断なく発表されていたのである。他の一面は漱石門下の逸材吉村冬彦としての生活であって、その随筆もまたわが国の文学史上に不朽の足跡を止めている。この一見全然相反する二方面の仕事が先生の場合には渾然として融合していたのである。先生はある時、自分にその点について「科学者と芸術家とは最も縁の遠いもののように考える人もあるが、自分にはそうは思えない。趣味と生活とが一致しているという点ではこれくらい似寄ったものはない」と語られたことがあった。科学も芸術もともに職業とせずして生活とされていた先生の頭の中では、この両者は実は区別が出来ていなかったのであろう。

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