遺愛集
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あらすじ(AIが作成しました)
巣鴨拘置所に収監される死刑囚島秋人は、篤志家の支援を受けて自選歌集「遺愛集」を出版する。本書は昭和三十六年から三十八年までの短歌数百首を収める。拘置所という極限の環境下で、死を覚悟した著者が抱く生命愛惜の念や、自身の生を見つめ直す思念が歌に投影される。著者と師弟関係にある窪田空穂は、序文としてその歌風と人物像を論じる。未熟ながらも深い真実感を湛えた作歌の数々は、作者の生命そのものとして将来も生き続けることを綴る。
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数日前、巣鴨拘置所内に、死刑囚として拘置されている島秋人君から来状があり、今度はからずも、篤志の方々の厚情によって、「遺愛集」と題している自分の歌集が出版されることになった。ありがたい次第であるといって、その方々との心つながりを、言葉短く知らせて来た。心つながりは、何れも同君が、「毎日新聞」の歌壇に投稿している短歌で、選者としての私の選に入選した作をとおしてのものである。そのことは私は今度はじめて知ったことで、現社会にもそうした篤志な方々が少なくないことを知り、そのこと自体に対して感激の情を抱かされたのである。
秋人君の来状は、今一つの用件を含んだものであった。それは「遺愛集」に序を添えて呉れ、又、題簽も書いて呉れという依頼であった。
この依頼は今度が初めてではなく、やや以前にすでになされ、私は承諾していたものである。その際の秋人君の書状は私を感心させるものであった。大意は、秋人君と私との関係は、毎日歌壇の投稿者と選者ということに過ぎない。その選者を自分の師のごとく思っているのは、甘え心からの独りぎめであるが、それは許して呉れ。自分には歌集を出版して下さろうという二、三の方々があるが、生前にそのようなことをするのは、被害者に対して相済まぬ感がするので、死後にして下さい。可能なかぎりの詫びをしての後にして下さいと延期を願っている。出版の際には序と題簽を書いて下さることをお願いするというのである。まことに筋のとおった、行き届いた文意だったので、私は感心して承諾したのであった。
今回の出版は生前のことで、趣がちがっているが、出版してやろうと言われる方は、以前の方々とは別の方で、はなはだしく秋人君を感動させたようである。又、秋人君がよろこんで応じる気になった心中の機微は、他からは推測のしがたいものがある。