日がさとちょう
本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
山あいの村で育った耳の遠い娘は、奉公のために都へ向かう。五年後、華やかな日がさを携えて故郷へ戻るが、村の娘たちの争いで傘は破れ、彼女たちは離れていく。やがて再び都へ旅立つ際、耳の遠い娘はびっこの友人へ形見としてその傘を譲る。その後、谷に消えた傘の代わりに美しい模様の蝶が山に舞うようになる。都会の生活を経て故郷との懸隔を感じつつも、変わらぬ友情や思い出を抱き続ける二人の娘の心情と別れを描く物語である。
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ある山の中の村に、不しあわせな二人の娘がありました。
一人の娘は、生まれつき耳が遠うございました。もう一人の娘は、小さな時分にけがをして、びっこであったのであります。
この二人の娘は、まことに仲のいいお友だちでありました。そして二人とも性質のいい娘でありました。
二人の女の子は、どちらも十四、五歳になったのであります。そして、それぞれなにかふさわしい仕事につかなければなりませんでした。
ある日のこと、耳の遠い娘は、びっこの娘のところへやってまいりました。びっこの娘は、いつにないお友だちの沈んでる顔つきを見て、
「なにか心配なことでもあるのですか?」と、やさしくたずねました。
「私は、遠いところへゆかなくてはならないかもしれません……。」と、耳の遠い娘は答えました。
びっこの娘はそれを聞いて、びっくりいたしました。二人が、別れるということは、どんなに、悲しいことであるかしれなかったからであります。
「遠いところというのは、どこですか。」と問いました。
「東京へ奉公にゆくようになったのです。私は、うれしいやら、悲しいやら、わからないような気持ちでいます。」と、耳の遠い娘は答えました。
「まあ、東京へ? それは、どんなにしあわせだかわからない。私も、一度東京へいってみたいと思っていますが、こんな体では、とても望みのないことであります。あなたは、東京へいって、にぎやかなところをごらんなさい。しかし、後に残された私は、さびしいことでしょう。」と、びっこの娘は、涙をのんでいいました。
二人は別れを惜しみました。村の若い娘たちの中では、こんど東京へゆくようになった耳の遠い娘をうらやましく思ったものもありました。
ある日のこと、耳の遠い娘は、みんなに村のはずれまで見送られて、いよいよ都に向かって出発したのであります。
彼女は、道すがらも、汽車の中も、だんだん遠く隔たってゆく故郷のことを思いました。また、仲のよかったびっこの娘のことなどをも思い出して、いつまた二人はあわれるだろうかと、悲しく思わずにはいられませんでした。